思い出すのは、雪のなか二人のあとを一人歩いて帰ったこと。夕日で紅く染まった川面と雪を前に立ち尽くしたこと。段々近づいてくる足音に心躍らせたこと。急いで階段を掛け降りて引き止めたこと。
思い出す度に、遠ざかっている気がする。
もう、ただの幻に成り果てている気さえする。
思い描く最後を伝えたら、笑われてしまうだろう。
「元気でな。」
人はどんな想いでこの言葉を使うのか。恐らく相手を思いやって発するのだと思うのだけれど、今日はなんだか悲しみを纏って、私に襲ってきた。これで終わり、と伝えられてしまったようで、ひどく寂しくなった。
私にとってたった一人でも、
あっちにとって私は、大勢のなかの一人でしかない。
これで終わり、なのか。