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その涙はしらたきのように

年末年始実家帰った

31日は地元のしょっぱいイルミネーションを友人と見に行ったりフライング初詣したりとなかなか充実していた
この時の私は新年早々白目をむくことになるとは思ってはいなかった


1月1日、家族で晩御飯に鍋を囲んでいると妹が
「お姉ちゃん、私いまの彼氏と今年中には結婚するつもりなんよ」
はにかみながらそう報告してきたので私はマロニーを掴みそこねた
「え、え…ちょっとまって、いまあんた23歳やろ…はやくない…?いや、はやい…はやいって!はやいよ…しかも付き合って半年くらいやろ…?はやい…はやいって!はやいよ!それははやい!はやすぎ!ね、よく考えなよ??ね?」
私が早口でそうまくしたてると妹はそうかな?って首を傾げてたので
「いやはやいやろ!母さんと父さんもそう思うやろ!?」
必死の形相で両親に同意を求めると焼酎をチビチビ呑んでた父は
「いや〜もらってくれるなら父さんは嬉しいよ、この前彼氏君とご飯食べたけど、すごく良い子だよ、父さんは賛成だよ」ニコニコしながらそう答える父
ダメだこの人は…焼酎お茶で割ってチョビチョビのんでいろ!
そう心の中で悪態ついてすがるような瞳で母をみると母は
「母さんも妹が決めたことだし、文句は無いよ、彼氏君は年上だししっかりしてるからね」
このお言葉である
私は溶き卵をさらにかきまわしながら
「ふ、ふ〜ん、でもさ妹その人がはじめての彼氏でしょ?も、もっと遊ばなくていいの?」目をギョロつかせていうと
妹では無く母が
「私も父さんがはじめての人だよ、でも今こんなに幸せだし、後悔なんてしてないよ」
ピシャリとそう言い放った
私の箸からしらたきが涙のように流れて落ちた
絹ごし豆腐のように震える私をみて妹が
あさっての従兄弟との食事会の時彼氏つれていくよ、姉ちゃん見極めてよっていうから
私は奥歯を噛み締めながら(半端な男なら…絶対に妹をあげないからね…)
そう誓い拳を強く握りしめた

その夜お風呂はいろうとした際に化粧落としがなくて
私が母さんに「母さん、化粧落としがないよ」と報告すると妹が
「あ、姉ちゃんこれ使いなよ」って小分けにされたパックの化粧落としを沢山渡してきたから
「あ、ありがと!いっぱいあるね!支給品?」
って聞いたら妹はにっこり笑って
「うぅん、モーテルのやつ」
そうこたえた
私はウオオォと全裸で慟哭しキッチンの母のもとに走り
「妹が男とモーテル!!!しかも妹がラブホをモーテル!!!」
原始人みたいになってる長女をみて母は「うん知ってるから、妹ももう子どもじゃないんだから、あんたがとやかく言うことじゃないでしょ」
そう冷淡に言い放った
心まで冷え切った私を湯船は優しくあたためてくれた


2日は高校の友人とあったり、中学の同窓会いったりした
中学の同窓会はもうみんなの名前が全然わからんくて
友人と「誰が誰かわからんやないか〜いっ!ルネッサ〜ンス!」ってずっと乾杯するしかなかった
その後ファミレスに友人2人と集合したんだけど妹が結婚するかも知れない事を報告したら
先こされてやんの…って同情めいた表情をされた後
おめでとうって言ってくれた
私が黙って梅昆布茶のんでると
あんた妹におめでとうっていうたん?って2人から言われて
「いってないよ」って頬を膨らませて拗ねたら
「いえよ!」「心までブスか!」「頬を膨らますな!」「腹立つ!」
って新年早々罵倒された

私は新年早々の罵倒に感情が爆発し
「私だっておめでとうって言ってあげたいわ!!!でも半年前にいきなり飛び出してきたどこの馬の骨ともわからん男に妹をとられるなんて耐えられない…耐えられないのよ〜〜〜!!!しかもすでにモ、モ、モーテル行っとるんよ〜〜!!」
そう吠えてファミレスのテーブルに突っ伏した
友人達は絶句
一転し優しい声色で「三日の夜ご飯一緒に食べるんやろ?その時話してみたらいいやん」「いい人やと思うで妹ちゃんが選んだ人やもん」
必死でフォローし始める友人達
新年早々情緒不安定ですまん

三日のお昼はばあちゃん家に従兄弟達や親戚のみんなと集合したのだけど
妹は仕事で行けなくて
私はこれはチャンスだと思い親戚中に
1月1日の妹の結婚宣言について発表
どう思う?ってみんなにたずようとしたら
親戚中が「やったやん!」「喜ばしい!」「はやく孫がみたいねぇ」と一斉にお祭り騒ぎ

私は動揺しテーブルをドンと拳で叩き「ちょっとアンタたち待ちなさいよ!」とオネエのように絶叫

「妹の彼氏はね…まだ結婚もしてないのにもう妹をモーテルに連れ込んだのよ!!許せない!これは許せないよ!モーテルの化粧落としがうちに大量に…あんなに大量にあったんよ!?」

涙ながらにそう訴える私に小さい頃からお世話になってる親戚一同がいっせいに苦笑

従兄弟の兄ちゃんが「じゃあお前いままで誰ともセックスしてないんか?」とか下世話持ち込んできたから
「私は私だからいいのよ」と言い返すと
おじさんが「おい肉美矛盾やぞ」とか野次ってきてヤバイ論破される…って奥歯を噛み締めていた

するとキッチンからうちの長老的存在であるばあちゃんが大量にあげた唐揚げをもって現れた
ばあちゃんは古風な女性だから私に賛成してくれるはず…ッ
そう思い私はばあちゃんに駆け寄りエプロンにすがりつき
「ね!ばあちゃん!結婚まだの男女がモーテルなんて許すまじよね!?」
そう訴えるとばあちゃんが唐揚げを静かにテーブルに置いて
「肉美は考えが古いわ」
そう一言呟いて音も無くキッチンに戻っていった
もうすぐ80歳の人に古いと言われる私とはいったい…
白目をむく私の耳に親戚中の笑い声がこだまし続けた


そしてその晩
従兄弟のみんなと私と妹、そして妹の彼氏と焼肉たべにいったんだけど

「いまこそ決戦の時」と白目がほぼ充血してる私に彼氏君は

「あ、妹ちゃんのお姉さんですか、初めまして、妹ちゃんとお付き合いさせてもらっています、よろしくおねがいします。」
照れ臭そうにはにかみながら挨拶してきた
私の方が彼氏君より年下なのにビックリするくらい丁寧である
しかもものすごい驚いたのが
かなり低音のイケメンボイス

い、いい人かも知れん…さっそくぐらついた私だが、モーテル事件を忘れるな、リメンバーモーテルと小さく呟いて深呼吸をした


うちの従兄弟達ってビックリするくらい破天荒なんよ
もうなんかこっちが必死でフォローせんといけんレベルなんやけど

うちの姉ちゃんは焼肉屋さんで毎回春巻き頼むんやけど毎回「中のエビ抜いて?」って店員さんに言い出すんよ
「そんなん自分で抜きなよ」って私が注意しても止まらないような女なんよ

兄ちゃんは兄ちゃんで礼儀という言葉が辞書にないから彼氏君に
「なぁ、何歳?」ってタメ口でスタートして彼氏君が年上だと判明しても
「マジだ?年上のパティーンね?」
と返すような
なんで年齢きいたん?パティーンって何?って混乱を誘う男

もう1人の兄ちゃんは「いま温泉はいってるから遅刻するわ」って連絡いれてくるし
そんな兄ちゃんの嫁はギャートルズにでてくるキャラクターかと思うくらいの露出狂で肉を食べる姿がチーターを彷彿とさせる女豹系女子

こんなギリギリ人間の形を保ってる人達が親戚なんて彼氏君ひいてるかなとチラリと顔をみてみるとニコニコしてる
姉ちゃんがどんな驚くべき行動
(ソフトクリームの上にバニラアイス乗っけてくださいと真顔で店員さんに交渉する)を行っても顔色をかえず

兄ちゃんが「マジで結婚すんの?」ってズケズケきいても
「僕はしたいと思っています」
とイヤな顔ひとつせず丁寧にこたえる
もの静かででしゃばらない
かなりの好青年
そしてせっせと妹のお皿に焼けた肉をのせていく
なんて甲斐甲斐しい

その後みんなでカラオケいったのだけど
彼氏君腰抜けるくらいカラオケ上手で音痴しかいない家系の我々は白目をむいた

うちの妹はかなりの音痴で親戚の中でも一二を争うレベルだからみんなに笑われるんだけど
彼氏君はニコニコ妹の歌声をきいてた
私が彼氏君に「うちの妹歌下手ですよね?」っていったら
「ううん、がんばってて、すごい上手」そう照れくさそうに笑顔でこたえてきた

負けた……

認めるしかない…だって彼氏君イイ奴なんだもの…
ほんものの愛が無いと
妹の歌声って耐えられないんよ

私は彼氏君の瞳を見つめがら
「幸せにしてやってください…妹を…」
一生懸命言葉を絞りだすと彼氏君は
笑顔で「もちろん!」とハッキリこたえてくれた

私は号泣しながらマイクを握りしめ
明日もし君が壊れてもを
2人の幸せを願いながら熱唱するしかなかった

家にかえって妹とお風呂にはいりながら
「彼氏君の両親は良い人達なん?」ってきいたら
「お義母さんすごい優しいよ〜っこの前一緒に晩御飯つくったよ!」ってニコニコ話してくれた
「お義父さんは?」ってきいたら
妹は一瞬悲しい顔して
「彼氏のお義父さんはね、彼氏が中二の時亡くなっちゃった」
私が何も言えずにおったら妹は
「やけんウチ絶対彼氏と幸せになりたいんよ、彼氏いっぱい苦労しとるけん」
って笑顔でいってきて
妹はずっとこどもだと思ってたのに
もうお姉ちゃんが口うるさく言わなくても一人で判断して歩けるんか
知らないうちに大人になったなと
湯船にもぐってすこし泣いた


帰りのバスで妹から
「私の彼氏どうやった?」
ってラインきたから
「すごく良い人でお姉ちゃん安心したよ」って返事したら






こうかえってきてまた泣いた
世界で1番幸せになってほしい
私のたった1人の妹よ

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