【童話】お布団のつくも2【未完】

 さてさて、ところ変わってこちらは地上。まん丸真っ青な地球の裏側。地下の国ではたいそう大きなお腹を持つ、大きなおおきなワニの王様がいらっしゃいました。それはそれは立派なワニで、お月さまのまどろみもお日さまの光りも届かない真っ暗くらな地下の国で、土の民たちが仕合せに暮らせるように常に気を配っています。毎日まいにち、昼も夜もない暗闇城の玉座の上で、うーん、うーんとうなり続けておりました。と、いうのもワニの王様はそれはそれは心配性なワニだったからです。


「王様、今日のお食事はなにをめしあがりますか」

「うーん、うーん、なにを食べよう」

「王様、本日はどのお洋服に着がえますか」

「うーん、どの色もかっこいいなぁ」

「王様、王様、お休み時間はどのようにすごされますか」

「うーん、うーん、うたたねしようか、トランプしようか」


 ワニの王様はとても立派だったので、国民のためならどんな仕事も、右から左へ音を飛ばすよりも早くこなすことができましたが、自分のことだけは一人ではなんにも決めることができませんでした。こうしたほうがいいのかしら、いやこんなふうにするのがよいのかな、そんな風に自分のやるべきことが正しいのかどうかとても心配していたのです。ワニの王様は地下の国が大好きでしたから、大好きなみんなに大好きになってもらえるようにがんばった結果なのですが、かえってワニの王様の臣下や国民たちは、そんな王様をいつも心配しておりました。あまりに自分のことについて悩んでしまうので、いつもお仕事ばかりしているからです。自分のことを後回しに、さっさかさっさかお仕事へと向かうため、ワニの王様はいつでも大きなお腹で転がるように駆け回っているのでした。あまりに忙しないものですから、地上のみんなが横になって耳を地面にくっつけるたびに、ごろごろゴロゴロ、まるで地球がお腹を空かせているように聞こえるのです。


 そのため、こっそりとどうしたら王様が心配せずに自分のことを考えるか会議を開くのが、地下の国でのブームとなっておりました。もちろん国民全員が真剣に話し合っています。


「ぼくが思うに、王様はつかれてるんだ。だからゆっくり土のおふろに入るべきだよ。ひんやりとした土の中はきもちがいいよ」

「それよりおいしいごちそうを食べてもらおう。あんなに大きなお腹なのだもの。きっとお腹いっぱいになれば、心配ごとなんてどっかにいくさ」

「いえいえ、王様はぐっすりお眠りになればいいのよ。こもり歌をさしあげに行きましょう」


 いつまでたっても結論はでません。くるくる踊るように国民たちはお互いの良い考えを言うのですが、たいていがすでに王様がためしてみたことだからです。みんないっしょうけんめい頭の中身をひっくりかえしますが、どれもあまり効果がないものばかりでした。


「そうだ、お日さまに会っていただくというのはどうかしら」


 あるとき、臣下の一人が名案だとばかりにさけびました。彼女は王様の一番の洗濯係で、地面の下に流れるお水に乗ってやってきたお魚から、お日さまのことを聞いたのです。


 いわく、お日さまはぽかぽかしている方だと。いわく、お日さまの笑顔はとってもあったかいよいのだと。そして、お水も土も地上にあるすべてのものに元気をくれるすばらしい方なのだと魚は彼女に話しました。


 洗濯係は、いつもどうしたら気持ちよく王様が服をお召しになれるかしらと、ひやっこい洗濯の仕方を工夫していたので、ぽかぽかあったかいお日さまが洗濯物を乾かしてくれるのだと聞いてびっくりしました。そこで思いついたのです。地下の国はとても深いふかいところにあるため、いつもひんやりしています。光というものもありません。もしそのお日さまに会ったのなら、王様はきっと元気になって心配ごとなど気にならなくなるにちがいありません。

 王様一番の洗濯係は、急いで地下のみんなに話しに行きました。