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【童話シリーズ】灰かぶり 〔カラメリゼの遺言〕


甘い甘い 真っ白な
粉砂糖を 振りまいて
ザラメの石畳
透けるヒールを打ち鳴らす

真珠のドロップ 耳飾り
まぁるく巻いた 黄金(こがね)の糸に
大きな淡い 紅薔薇の
あめ細工のコサージュを差しましょう

ふわりとシフォンの スカートを
ひるがえすの 右手をどうぞ?
それもこれもあなたのために
さぁ、甘いワルツを踊りましょう


差し出した 白い手袋
伸ばしたのは 色付く指先
取られたのは 無骨な腕で

私は主役(お姫さま)にはなれなかった


くるくる くるくる
回る2人 キラキラと
バカな私 溶けかけたヒール
本物のガラスの靴に、勝なうわけないのにな

でもね、王子さま
白粉(おしろい)に乗せたルージュ
けしてウソではなかったのよ?


だから せめて
溶けてしまう前に

真っ黒になるまで
この身を焦がせて見せるわ

一番きれいな 砂糖のティアラ
あなたの目に焼き付けるわ


「さようなら!、愛しい人」
お幸せに、なんて言わないから



空っぽの シロップの小瓶
落として行くくらい、良いわよね



















<あとがき>
あっまいものが書きたくて頑張った結果、乙女度はあがったんですけど、こう、なんというかまた切なめになりました。
イメージはシンデレラのまま姉さんor王子さまの取り巻き
…そもそもこのイメージで甘くなれっていうのが無茶ですよね
何故でしょう…?

補足

カラメリゼはお菓子を飾るために砂糖をバーナーとかで焦がして作る細工です

【童話シリーズ】白雪姫

パイを焼こう
甘い甘いパイを焼こう

のどかな昼下がり
テレビの声につられて
唐突に始めたお菓子作り

用意するのは
真っ赤なりんご
さらさの小麦粉
透き通る砂糖達

慣れた手つきで生地をこねる
いつも、と呼んでいた
あの時のように

あの時に閉じこめたのは

白い白い吐息でした
赤い赤い体温でした
甘い甘い想いでした

あの時に崩れたのは
焼き菓子のような
脆く儚い願いでした

誰かのために焼き上げたパイは
誰の物でもありませんでした
誰の物にはなりえませんでした

手に残ったのは
真っ白な皿一枚だけでした

パイを焼こう
あの時のように
甘い甘いパイを焼こう
白い皿に一切れだけのせて

甘い甘いパイを

【童話シリーズ】人魚姫

遠く遠く響く
細波のなかで
キミの声を聞いた


出逢うはずのなかった会合
見るはずのなかった表情
知るはずのなかった思いは
青い水面(ミナモ)に揺らめいた

叶うはずのない交わした約束は
いつまでも岸に縛りつけ
懇願する彼らを見送りながら
一筋の白い軌跡を描きだす

遠く遠く響く
細波のなかで
キミの声を聞いた


あの日あの時この場所で
絡ませた小指は形を変えて
薄い銀線となり果てて
願った想いを切り裂いた

あの時願った想いは薄れ
かすれた言葉が残るだけ
綺麗だと誉めた歌声は
ただの思い出だとしか残らない

遠く遠く響く
細波のなかで
ボクはキミを聞く


ボクはキミを聞きながら
ここで歌い続けるだろう
キミに誉めた歌声を
思い出しては歌うだろう

届かないと知りながら
意味のない戯れ言を
聞こえるキミへと返すため
波間に語り歌うんだ

【童話シリーズ】親指姫

ねぇ、愛しい君。

たとえ君が望まないとしても、僕は君に手を伸ばさずにはいられなかったんだ。

別に恋仲になりたかったわけじゃなかったんだよ?君は信じられないかもしれないけれど、僕はただ君と話してみたかったんだ。

あの夜、君を窓辺で見かけたときから、ずっと。

君はどんな声をしてるのかな、どんな言葉を話すのかな?なんだかドキドキして、あぁ、これが恋ってやつかな。柄にもなく照れてしまって、暫くは眠れなかったな。

だから、思いきって声をかけてみたんだ。お友達になりましょうって。君の心には触れられなくても、傍に居させてほしかったから。 君は許してはくれなかったけどね。

うん、君は確かに僕を受け入れてくれたよ。けれど君の周りはキラキラしていて、どれだけ虚勢を張ってみても、つりあわなかった。

自分から駆け寄ったのにも関わらず、僕は自分で諦めてしまったんだ。

ねぇ、愛しい君。

君を傷つけてごめんなさい。こんなコトしかできない自分は、なんて弱いんだろうか。何度謝ったって遅すぎることだけれど、せめて、今だけは僕を見てください。

僕だけを見てください。

どんな色の瞳でも、それだけで僕は救われるんです。

どうか、あなたが幸せでありますように



「親指姫」にでてくるカエルのお話。

【童話シリーズ】とあるおとぎ話の片隅で

花が恋でもしようかと
いばらの姫へと押しかけた
「恋や愛など甘いのか
  ならばどれほど甘いのか」

呆れたいばらはかく語る
「あなた無知なの馬鹿かしら
  あれほど苦いもそう無いわ」

糸がほつれた交えたと
騒ぎの中身はからっぽで
恥知らずのいばらさえ
枯らした涙はトゲの数


ふくれるつぼみの花君は
「ならばどれほど苦いのか」
萌え木の小枝、揺すれども
落ちない葉っぱは揺れるだけ

いばらに答えはありません


「ならばならば、」と花は言う

「恋や愛など苦いなら
  想う心も苦いのか」
「あれは甘いのしょっぱいの
  たまに苦くてしょっぱいの」

いまだ咲かない花の君
いまだつぼみの花君に

「あなた無知なの馬鹿なのね」
いばらの姫君かく語る

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プロフィール
一色あるとさんのプロフィール
性 別 女性
職 業 大学生