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【散文】旅をするひと

膝に広げた文庫本をめくってる
角の丸いページをそれとなく流しては
指に触れる空気を楽しんだ

まぶたの裏で、閃光のような赤がチラついている
今日はとても暑い
ガラス向こうから届くお日さまは
ずいぶん張り切ってるらしく

対して広がる雨雲は
あんなにたくさんの雨粒を抱えてるはずなのに
ごきげんに軽快に、空を滑っているよ


西と東の真ん中で
かんべんしてよ、なんて旅人は
びろうどのシートに背中を預けてるんだ

【散文】にげみず

「夢をみる前に夢を見よう。どうせ滞るドブと大差なくなるのだから」

そうして見下したまどろみの中で
幾許かの星に想いを馳せた

糸紬のような思考を反芻しては
青臭い茨に自ら寄るように

嗚呼と吹かした糖蜜色の煙草と
森に響くセロはただひたすら遠くを行きて

乳白の小石を磨きながら
あの日噛み砕いたなにかが
また産まれやしないかと

期待するのだ

【散文】みつばち

「青い鳥はどこだ」と
幸福の中を生きる子どもが
張り上げた泣き声を
いったい誰が信じよう

相対する巣穴の僕たち
君はいつだって聞かなかったね
慈しみの言葉すら
「めんどくさい」の向こうに行ったというのに

君を愛した言葉は
君が愛する言葉ではなく
都合の良い手を甘受しては
自分にはくれないのかと嘆いて

めいっぱい手を伸ばしては
なんで取ってくれないの?だなんて
当たりまえでしょ
差し出しては食い違うんだから

君が大人なったとき
甘ったるい器が取りこぼしたものを知ったとき

二度とは戻らない
スプーンの先にまた泣くんだろうか

【散文】プライド

色を捨てた手
押し付けた刃先に
辿るように、力を預けた


溢れる涙は
他人事のように冷たくて
反比例して流れる血
焼けるようにって言葉がピッタリだと思う

後悔しないと決めても
痛みには弱くて
すぐ、音を上げそうになった


口に含んだ血糊
喉に絡まる温度と一緒に
飲み込んだ言葉

空気を伝うことなく
還る響きに酔いながら
また手に力を込めた


忘れられないのなら
いっそ痛みに変えてしまおう
留めることが出来ないのなら
流れに任せてしまいなさい


落としたクツは拾わなくちゃなんて誰が決めたの?


壊れたモノは壊れたままに

どんなに逃げても
全部私のモノだから

含んだ血は甘かった

【散文】アイしています

アイしています
アイしています

泣き叫ぶほどに
顔を歪めて
髪を振り乱すほどに

アイしています

例えば夏の眼を突き潰す日差しのように
例えば冬の凍てつき切り裂く風のように

ただただ自分に流されて
思うままに
突きつけるままに

ひたすらに叫びます

溢れるのは
求めるでなく
衝動なのです
衝撃なのです

想うのではなく
思うのです

こんなもの
アイとは言わずして
なんとよぶのでしょうか

アイしています
アイしています


ただそのままに
アイしています
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プロフィール
一色あるとさんのプロフィール
性 別 女性
職 業 大学生