今晩は、水無月吹雪です。
此処は私が見た夢を元に書き起こした小説のコーナーとなっています。元が夢なので、支離滅裂になっている箇所が有ったり、中途半端な所で終わったりしますが、仕様なので苦情は受け付けません。予めご了承の上、先へお進みくださいませ。
また、興味の無い方はブラウザバック推奨です。
因みに、迷家並に不定期に出現しますので、予めご了承くださいませ。
大丈夫だという方は追記へどうぞ…
〜これは或る人間の物語〜
数刻前、私は蒼羽(アオバ)に"本を探すのを手伝ってほしい"と頼まれて一緒に図書館に来ていた。
「−−それで、本は見付かった?」
「うん、香純(カスミ)ちゃんのお陰で見付かったよ!」
ありがとね、と笑う蒼羽につられて私も微笑む。
そんな穏やかな気持ちでいた刹那だった。
「おい、動くな」
突然、本棚の影から男が私達の前に飛び出してきた。
手にはナイフが握られており、刃先は私達に向けられている。
蒼羽が私を庇う様に一歩前に出て口を開く。
「…何ですか、貴方は」
「お前ら、この学校の生徒だろう?それなら、知ってるよな−−特別科クラスの連中が何処に居るか」
「「!?」」
私達は思わず顔を見合わせた。
何故なら−−私達がその"特別科クラスの生徒"だからだ。
「…その様子だと知っている様だな。なら話は早い。直ぐにそいつらが何処に居るか教えろ。じゃないと−−殺すぞ」
男はすっと近付き、私の喉に刃を突きつける。
と一瞬後、私の横から男の手首を掴む手が伸びた。
「待って、ください」
「蒼羽…?」
彼は男を真っ直ぐに見つめ、口を開く。
「人質なら、僕がなります。だから、彼女を解放してください」
駄目、と言おうとした私を彼は制し、大丈夫だと言う様に微笑みかけてくる。
男は最初こそ驚いたものの、直ぐにニヤッと嫌な笑みを浮かべる。
「良いだろう−−お前が奴らを探して俺に連絡するんだ。此奴を殺されたくなければ、さっさと行く事だな」
「〜〜っ!」
私は心の中で蒼羽に謝りつつ、急いでその場を後にした。
「(どうしよう、どうしよう、どうしよう)」
私は考えた。
どうしたら蒼羽を救えて、クラスの皆を巻き込まずに済むのか、考えながら走っていた。
図書館の外に飛び出した先には様々な建物が連なっており、その所為か学生達が多く、皆それぞれの時間を過ごしていた。
その光景を見た私は、咄嗟に人の少ない場所へ向かおうと、眼下に広がる湖へ向かう下り道へ向かった。
その道を下っていくと、だんだんと人が疎らになっていく。
ふと、湖の畔に降りる階段が目に入り、取り敢えず此処なら大丈夫だろうと小走りで向かう。
誰にも見られない様に、隠れる様にしてしゃがみこみ、其処でやっと一息つく。
数回深呼吸し、少し落ち着いた頭で考える。
どうしたら、皆を巻き込まず彼を助けられるか。
−−そうだ。
「此処でなら、きっと−−」
一つが考えが頭に浮かんだ私は、微かに震える手で携帯を取り、男に連絡しようとした−−その時だった。
「おっ!香純じゃねーか」
よく知った声に振り向くと、其処には同じ特別科クラスの桜介(オウスケ)、瓜生(ウリュウ)、和泉(イズミ)、瑛一(エイイチ)が揃って立っていた。
「そんな所にしゃがみこんで、どうしましたか?」
「なになに?お腹痛くしちゃったとか?」
瓜生と瑛一が私の傍にやってくる。
「−−ううん、何でも無いの。ただちょっと…考え事、してただけだから」
そう言って私は立ち上がる。
「そうか、あまり無理はするな」
「うん、ありがと」
そう応える私の頭を和泉がそっと撫でる。
彼等と喋りながら、私は一人考えていた。
戦闘に不向きなのは自分がよく分かっていた、けれど、被害を最小限にするなら、私が人の居ない所にあの人を呼び出し、立ち向かうしかない。
そう思っていたのに。
偶然にも彼等に会って、彼等が居ればあの人をどうにか出来ると思ってしまった。
私一人でやるより、確実だと。
「………巻き込んでごめんね」
小声で謝り、ごく自然な動作で男に"特別科クラスの生徒を見付けた"と、私の現在地と共に連絡した。
「−−此処に居るのか」
連絡から暫くも経たない内に男が来た。
「あ?何だコイツ?」
「…成程、此奴らがそのクラスの奴らって事だな?」
「ねえ、香純ちゃんどういうこと??」
私は瑛一の問いに答えず、男の方に向かう。
「貴方の言う通りにしたから、これで彼は解放してくれるよね?」
「ああ−−後は此奴らから聞けば良いからな」
男はニンマリと笑んで戦闘態勢に移る。
私は男の言葉にそう、と一言返し、その場から立ち去って逃げる−−振りをして、皆の所に向かう。
「ごめんなさい…!全部、蒼羽を助ける為なの!−−皆が居れば、あの人をどうにか出来ると思ったから」
「お前!?−−そうか、そういう事か」
男が状況を理解し、怒りに震える。
「てめぇ、俺を罠に嵌めやがったな!!」
男は禍々しいオーラを放ち、黒い玉を幾つも私達に向かって放つ。
私は咄嗟に自分のチカラ−−触れた物を無に還す能力−−で男の攻撃を消滅させていく。
「香純!」
「私は、大丈夫」
チカラで男の攻撃を防ぎつつ、私は口を開く。
「−−ねえ皆、お願い、私と一緒に戦ってくれる…?」
私が皆の盾になれば、後は皆があの人を無力化してくれると思う。
だけど、私の我儘に付き合う人なんて−−
「………水臭いな」
瓜生がそう言うと、皆も口々に喋り出す。
「瓜生の言う通りです。そんな事言われずとも、私達は貴女と一緒に戦いますよ」
「この学園に居ちゃあ、思いっきり暴れられる機会なんて滅多に無いもんな−−ま、そーいう訳だから、今日は手加減無しで暴れさせてもらうぜ!」
「あ、香純ちゃん、これが終わったらちゃあんと全部説明して、後僕達に相談しなかった事謝ってよね?」
皆は私と目が合うと微笑み、私も泣きそうになりながらも笑みを返す。
「皆…ありがと」
行こう、と言う声に皆が応え、戦いが始まった。
(end)