終:アンジェリカの贖罪

続き〈


そうして、何ら罪もない大多数、何十もの家族を

殺戮したに違いないのだ


頬には笑みを浮かべながら 口元ではアラーを唱えながら


アラーはそんなことを一切、望んではいない

間違った教育ほど恐ろしいものはない


遂に私は砂漠を越えて、脱走した


もうひとりの黒い青年と


シリア

 フランス


アメリカまで帰って来れたのは、

ぎょうこうに等しい

私の肌は7回、生まれ変わった
逃走中の激しい日焼けがそうさせた


私は生まれて初めて、生きたい!と願った

生きて、生きて、生き延びたいと

砂漠の地平線を見つめた


もう一度、アメリカの大地を見たいと願った


偶然と奇跡が重なって私は今、ここにいる


だから、神々に尋ねてみたかったのだ


私のように13人をも殺めた人間でも、生きていていいのか?と

戦争状態であっても

それは許されるのだろうか?


私にはわからない


天使様はおっしゃった


許されはしないが

許しを求めることはかまわない、と



   終




3,ISに騙されて

続き〈


アンジェリカは普段から、この兄を頼りにしていたのだから、
この事件はアンジェリカにとって弁解しようのない裏切りだった


これで綺麗さっぱり、「家族」と信じる人は居なくなった


天涯孤独、とも言える

アンジェリカは似たような友人の家の一室で、
隠れ里の仙人のように暮らし始めた、

高校も辞めた


パソコンとYouTubeだけが話し相手となったアンジェリカが、

見たことも聞いたことも、訪ねたこともない、目眩ましのような、原色のイラクの過激派の蟻地獄に騙されたのは

成り行きだった


アンジェリカの身の回りでは悪人は処罰されない されてもごく、軽い刑だった、むしろ、悪人がふんぞり返っていた


ISでは、はっきりと明確に罰を与えた

たったひとつの命を奪う、というやり方で

アンジェリカは自分自身が常に、死にたかったので、

嫌々、殺される側の思いは想像できなかった

想像力がなかった


そうして半年が過ぎたころ、

最初の死刑執行を命じられ、あとは惰性のように手を汚した

可愛かったアンジェリカは一直線に

女処刑人と化けてしまった


そんなアンジェリカでも、不思議と、時が経つに従って、この赤茶けた砂漠の真ん中で、私は一体、何をしているんだろう、、

という透明な思いが湧いては消え、消えては湧いた


自分の生は、全く、徒労に思えた


ただ言われたことを真に受けていたアンジェリカの目にも、
奥底に隠されている真実が透けて見えて来た

どこから見ても、上層部はエゴの固まりに過ぎなかった

ある日、アンジェリカは気がついた

自分たちの利益のための独裁国家を、暴力と武力で

大多数の犠牲の上に無理矢理造ろうとしているのがIS、


愕然とした

その日のことを考えると今でもおぞけが走る


風までが赤茶けている、その風土に晒されて

アンジェリカは深い深い後悔にため息を付いた


ここには、王様蟻と奴隷の蟻と、死刑執行される

普通の大多数の人間しかいない


空も大地も風も何もかもが、

狂った王様蟻の家来でしかなかった


大自然までも自分たちの配下に置こうと狂った爆撃を続けていた 


自爆攻撃?


洗脳された子ども達

私も危なかった

もう少し、幼ければ簡単に洗脳されて

自爆攻撃に選ばれていただろう

私は喜んで、命じられるままに、崇高な使命と思い込み、

自爆攻撃をしたに違いないのだ



続く〉




アンジェリカの秘密


アンジェリカはアイエスから戻って来た女だった


子どもも含めてたくさんの人を殺していた

本当ならば当局に捕らえられ、裁判を受けて死刑になる身だった

そのことを地元の神父に隠してISのイスラム教から、キリスト教カソリックに改宗していたが、

夜になるとアンジェリカは悩みに我を忘れた


自分が手をかけた罪のない子ども、大人の断末魔の声、顔、仕草が蘇ってくる


天使様、私は毎夜、赦しを乞うていますが、

それはやはり、いけないことでしょうか?


私は地獄のれん獄に行くのでしょうね?

私は、魂のある限り、死んでも生きても、
己れの犯した罪に苦しむのでしょうね?


アンジェリカ、あなたは未来永劫、赦されはしない、しかし、赦しを乞うことは認められている。


この詞を聴いたアンジェリカの頬に、滝のような涙が流れ出しました


苦しみと一緒に生きるのだ、と思った


まだ生きていることを感謝せねばならないだろう


あの子どもの母親の気持ちになってみたら、、、


あの青年の父親の気持ちになってみたら

私を同じ目に合わせたいだろう


神も人も、私を許さない


私も決して私を許しはしない

だから懺悔の生を生きねばならない


では何故、アンジェリカは
イラクに渡り、ISに身を投じたのか


アンジェリカの生まれ育った家庭は裕福ではあったが、精神的な飢餓があった


父親はアンジェリカが11歳の時、酷い交通事故に遭った、それから人が変わってしまった

車椅子の人となって意地悪い視線を世の中へ向け、ありとあらゆるものを憎悪した。

わが子もまた同じだった

優しかった父親の、アンジェリカは秘蔵っ子だったのに、

アンジェリカの光輝く世界は闇のようになってしまった


ようやく父親の態度にも慣れたと思われた頃、

耐えられないでいた母親が家を捨てた、
今でも、ストリートで男達と暮らしているのをかいま見る


ある日、突然にホームレス姿の自分の産みの親と出くわした時の驚愕。恥ずかしさ


アンジェリカには兄もいたが、兄はこの頃から道を外れだした。
ある晩、アンジェリカを襲おうとした


必死に抵抗し、逃げ出したアンジェリカは最後の一線を守ったが、下着までぼろぼろ、心はすっかり荒んでしまった



続く〉



天使ラファエル降臨



常緑の生け垣がまるでクリスマスツリーのように輝いていた

ここは住宅街、

天上からラファエルが下界を見降ろしていた


あと3日でイエスの生まれた聖なる日、

その祝日をことほぐために

天使ラファエルは頭を悩ましていた


誰を召し人にするかを


召し人は人間でなければならない


そして清純な乙女でなければならない

年齢の制約はなかった

そんなことを考えながらラファエルはこの住宅街に降りたったのだ


服装は天使の羽根を隠せる

白い緩やかなツーピース

だが輝いていた


あたりはもうすぐ日が暮れる

日没の美しい照り返しが

空一面をおおっていた


よしっ!

ラファエルは柄にもなく声を上げた


召し人になれそうな女性を見つけたから

彼女、アンジェリカはパーティーの花を探しに歩いていた


しかし、花よりもアンジェリカには探しものがあった


そのせいか、幾分、落ち着きがなく見えた


アンジェリカは自分を見つめる視線に気がついた

それは柔らかく優しく、
高貴なものに思えた

身震いすると、そっと右手を振り向いた
ラファエルがそっと微笑していた

まるでお母さんのようだった

アンジェリカは生まれて間もなく母を失っていたので、

あまりのことにみるみる涙がわいてきてしまった
もちろん、初めての体験

見知らぬ人の視線に感動的に泣くなんて・・


すぐにアンジェリカは自分の思いを打ち消した

アンジェリカは実は、母に置き去りにされていたのだから


ラファエルはアンジェリカにそっと問いかけた

神々をどう思うかを


幼児は深夜、目を覚ます


2歳8ヵ月の孫は9時に床につき

5時間眠っただけで

午前2時に目を覚ました


お母さんは大変です

4時間ほど相手をしてから
やっと眠れる


その間、たべるというので

手を付けなかった

夕食をリゾットに
アレンジし、


食べさせようと試みますが

あえなくノーヒット
茶系の見た目が気に入らなかったらしい

大体、きぃちゃんの食欲は

見た目から入ります

ひとしきり飛んだり跳ねたり

大暴れをしてから、(寝室で)笑


やっと寝ました

スマホ片手に


こういう夜が、程度の差こそあれ

果てるともなく


続きます



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