続き〈


アンジェリカは普段から、この兄を頼りにしていたのだから、
この事件はアンジェリカにとって弁解しようのない裏切りだった


これで綺麗さっぱり、「家族」と信じる人は居なくなった


天涯孤独、とも言える

アンジェリカは似たような友人の家の一室で、
隠れ里の仙人のように暮らし始めた、

高校も辞めた


パソコンとYouTubeだけが話し相手となったアンジェリカが、

見たことも聞いたことも、訪ねたこともない、目眩ましのような、原色のイラクの過激派の蟻地獄に騙されたのは

成り行きだった


アンジェリカの身の回りでは悪人は処罰されない されてもごく、軽い刑だった、むしろ、悪人がふんぞり返っていた


ISでは、はっきりと明確に罰を与えた

たったひとつの命を奪う、というやり方で

アンジェリカは自分自身が常に、死にたかったので、

嫌々、殺される側の思いは想像できなかった

想像力がなかった


そうして半年が過ぎたころ、

最初の死刑執行を命じられ、あとは惰性のように手を汚した

可愛かったアンジェリカは一直線に

女処刑人と化けてしまった


そんなアンジェリカでも、不思議と、時が経つに従って、この赤茶けた砂漠の真ん中で、私は一体、何をしているんだろう、、

という透明な思いが湧いては消え、消えては湧いた


自分の生は、全く、徒労に思えた


ただ言われたことを真に受けていたアンジェリカの目にも、
奥底に隠されている真実が透けて見えて来た

どこから見ても、上層部はエゴの固まりに過ぎなかった

ある日、アンジェリカは気がついた

自分たちの利益のための独裁国家を、暴力と武力で

大多数の犠牲の上に無理矢理造ろうとしているのがIS、


愕然とした

その日のことを考えると今でもおぞけが走る


風までが赤茶けている、その風土に晒されて

アンジェリカは深い深い後悔にため息を付いた


ここには、王様蟻と奴隷の蟻と、死刑執行される

普通の大多数の人間しかいない


空も大地も風も何もかもが、

狂った王様蟻の家来でしかなかった


大自然までも自分たちの配下に置こうと狂った爆撃を続けていた 


自爆攻撃?


洗脳された子ども達

私も危なかった

もう少し、幼ければ簡単に洗脳されて

自爆攻撃に選ばれていただろう

私は喜んで、命じられるままに、崇高な使命と思い込み、

自爆攻撃をしたに違いないのだ



続く〉