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班長!


誰に助けを求めればいいんだろう
今までの自分の人生で、これほどのピンチはなかった
いやマジで


中学校で仲の良かった友達が一年間のアメリカ留学をする事になった
昔から頭が良くて、特に英語が得意だったから、その話を聞いた時はやっぱりかぁと納得した
頭良いやつは違うなぁ、私ももうちょっと将来の事考えないとなぁと感心してた

それから数ヶ月後、その友達から長期休暇を利用して遊びに来ないかとお誘いがあった
友達のホームステイ先の家族がせっかくのクリスマスなんだからお友達でも呼んだらどうだ?と言ってくれたらしい
友達は私ともう一人、中学時代に仲良しだった子を誘ってくれた
海外で過ごすクリスマスだなんて素敵!と、私はすぐに両親にその話をすると、両親もなかなか機会がある事ではないしと許可してくれた
英語がさっぱり出来ない私だけでは到底アメリカまで辿り着かないだろうからと、両親は一緒に旅行に向かう友達に私の事をよろしくと頼んでいた

…そりゃあ、私の英語力は小学生もびっくりなレベルですよ
おはようございます位しか言えません
あ、自己紹介はギリギリ出来るかも

まあそんな海外に行かせていいか不安な私を引き連れて、友達とのアメリカ旅行が始まったわけです



…が、時差ボケの頭痛もいくらかマシになった二日目
ホームステイ先近くの大きな街に友達と三人で赴き、ハンバーガーショップで昼食を取り、ブラブラと街並みを楽しんでいた
途中で食べたドーナツが甘いのなんのって、虫歯になるかと心配になる位だった
赤や緑で木という木全てをデコレーションし、柱という柱全てを青色のLEDを使用したイルミネーションで飾っている
通りのアチコチにはアーティスティックなオブジェがたくさん建てられていて、日本とは違うなぁと妙な感動をしていた

それがいけなかったらしい
気が付いた時には英語ペラペラな留学中の友達も、英語がそこそこ話せる友達も、私のそばに居なかった
予想外の事態にせわしなくキョロキョロと周囲を伺う私の目の前を、背も鼻も高いいかにも『外国人』な人達が友人や恋人や家族とお喋りを楽しみながら通り過ぎて行く


「ど、ど、どうしよう…!!」


私は泣きたくなった
本当に、謙遜抜きで英語が喋れないのだ
英語が話せる子と行くからって、旅行者向けの英会話本を買わなかった過去の自分を恨んだ
でも後悔したって遅い
友達のホームステイ先がある高級住宅街で迷子になったんじゃない、ここはたくさんの異国人が行き交う大都会の真ん中だ
私のようないい年して迷子になる英語もろくに話せない鼻ペチャな日本人を気に掛ける人なんていないのだ

…少し悲観的になりすぎているようだ
だが、海外に対応している携帯を持っていないので友達と連絡の取りようがない
交番に行けばいいじゃないって?
馬鹿を言わないでくれ、私はビビりだ
アメリカ人だらけの(アメリカなんだから当たり前だが)交番だなんて怖くて入れない
最悪ピストルで撃たれるかも知れない!

と、とりあえず、どうすればいいんだろう?
まさか迷子になるとは思っていなかったからはぐれた時の集合場所を決めていなかったのだ
友達を探すために一人でウロチョロしたらそれこそ一生友達に巡り会えない気がする
ここは無難にこの場所で友達を待つべきだろうか…


「Excuse me.」

「………はい?」


これからどうしようかオブジェを見ながら考えていると、後ろから低い声がかけられた
思わず日本語で返事をして振り向くと、相手のコートしか目に入らなかった

そうか、外国人に話しかけられたんだ!

慌てて目線を上に上げると、彫りの深い顔立ちで、柔らかい色の髪を逆立てている男性が目に入った
服にあまり詳しくない私でも一目で上等な物だと分かるスーツの上に、これまた暖かそうなコートを着ている
ビジネスマンだろうか?


「What do you do to such a place alone?」

「え、え、え?」


何やらまた早口な英語で話しかけられた
実際は早くもなんともないのだが、英語がサッパリな私にはとても早口に思えた
あたふたとしている私を見て相手はまた言葉を重ねた


「…Are you Japanese?」

「えっ!」


これはいくら私でも分かった
さっきよりも男性がゆっくり喋ってくれたのもあるが、これは小学生でも分かるだろう
そうです、私は日本人です!
と言いたかったが、従姉妹の話を思い出した
高校の卒業旅行でアメリカに行った時、現地の男性に『日本人か?』と尋ねられたらしい
そこで素直に『はい日本人です』と答えたところ、日本人は捨てる程お金を持っているという外国人の間違った日本人認識のせいで一日中追いかけ回されたらしい
その従姉妹にアメリカ旅行に行くんだ!と伝えたら、『中国人か韓国人だって言いなさい!』と言い聞かせられた
私はカモにはならねぇ!の一心で叫んだ


「あ、あいあむちゃいにーず!」

「Chinese?」

「いえすいえす!」


ニッコリ笑顔でそう言うと、外国人男性は私よりも自然なだけどまぶしいスマイルを浮かべた
何で笑うんだろう?と不思議に思って見上げていると、英語でも日本語でもない言語で流暢に話しかけてくるもんだからたまらない


「え、え?中国語……?」


まさかビジネスマン風外国人が中国語も話せるとは思わなかった
どうしよう、中国人なんて嘘ついたけど中国語なんてニーハオしか分からない
バツが悪くて私は俯いて綺麗に整備されているレンガの道を見た


「………」

「…中国人じゃない?」

「えっ!?」

「ああ、やっぱり日本人か」


突然の懐かしい、まだ異国に来て二日目だが懐かしい母国語が聞こえた
驚いてまた見上げると、嘘をついた私に嫌な顔を見せず、男性は安心したように笑っている


「知り合いに中国人も日本人もいるから、なんとなく日本人かなと思ったんだ」

「は、はい…日本人です。ごめんなさい」

「え?いや、謝らなくていいって
ところでここで一人で何してるんだ?
英語話せないみたいだけど、観光?」

「はい…友達と観光で来たんですけどはぐれてしまって…」

「それであんな顔してたのか」


あんな顔って…おどおどした情けない顔を見られていたのかと思うと恥ずかしい
顔から発熱しそうだ
どう返事をしたものか迷っていると、男性はまたも気さくに話しかけてくれる


「友達とはぐれたのはここ?」

「はい、私がこのオブジェ?をぼーっと見てたら早く行くよって言われた覚えがあります」

「じゃあここを離れない方が良さそうだな」


男性はにっこり笑って私に左手を差し出す
左利きなのかな?と思いながら私も左手を差し出して握手をした
そうして男性の顔を見るとポカーンとしていた


「握手じゃなくて…手を繋ごうとしてたんだけど」

「えっ!うそ、恥ずかしい!」

「ははっ、面白いな」

「…ほんと忘れて下さい………」

「とりあえず、すぐ横のカフェで一緒に君の友達を待とう
こんな寒い所にいつまでも居ると風邪ひいちまうぞ」

「え…いえそんなご迷惑をおかけする事は出来ません!」

「迷惑じゃないよ、丁度暇なんだ」


男性は今後こそ左手で私の右手を包み込むように握って、カフェへと歩き出した
私が申し訳なくて立ち止まっても、優しい笑顔でこんなのなんでもないよって言う
どうしてこんなに親切なんだろう
やっぱり変な人なのかな、でもそうは見えないし
カフェの入り口まで来て、男性は『ああそうだ』と立ち止まった


「俺はリーバー・ウェンハムって言うだけど、君の名前を聞いてもいいかな?」


外国人は名前までかっこいいんだなぁと思った海外旅行二日目の出来事













ずっと前から書こうと思っていた話
無駄に長くて結局何が言いたいか忘れた…
現代で幸せに班長と恋がしたい

訪れなかった未来へ/笹塚夢

茹だるような暑さが続く
猛暑という言葉がこれほどしっくり来る夏はなかなか無いだろう
暑さから逃げようとファッションビルなどに入ると今度は途端に冷やし過ぎている冷房で冷や汗が出てしまう
その点、病院のロビーは実に快適な温度が保たれている
外から建物に入ったばかりだと汗がひくまで少し時間がかかるが、その後は涼しい程度の冷房が丁度良い

白を貴重とした清潔感のあるロビーを歩き、エレベーターホールへ向かう
開かれたエレベーターの扉からは、パンツタイプの白衣を着た看護師が会釈をしながら出て来た
昔はスカートタイプのナース服にナースキャップが看護師のイメージだったが、最近ではスカートタイプでは動きにくいからとパンツタイプの白衣を着用する病院が多い
ナースキャップも衛生的な問題で廃止されている所がほとんどらしい
同乗者の居ないエレベーター内で、自分の高校時代の看護師を思い出す
入院中に見た看護師はみんな可愛らしいスカートタイプのナース服だった
自分も年をとったのだなと、少し遠くを見つめてしまう

目的の階まで乗って来る人もなく、少しの間遠い高校時代に思いを馳せた


いつもならこの時間はリハビリが終わってベッドで死んでいるのか生きているのか判別するのが難しい位じっとしているはずだと思い、病室の扉をノックする
中から抑揚のない声の返事が聞こえたので、扉を横にスライドさせる
衛士はやはり上半身を起こした姿勢でベッドに座っていた


「リハビリ行って来た?」

「ああ」

「今日凄い暑いよ、出た?」

「出てない…窓から見るだけで十分」


無表情のまま、衛士は少しだけ瞳を窓へ移した
そんな事じゃ体力戻んないよと言うと、今でも百合よりはあるからと言われる
有り得る話なので反論出来ない


「昨日弥子ちゃんからメール着た?」

「ああ…今度はスペインだってな」

「スペインなんて日本より暑いだろうね」

「…餓死しないかの方が心配じゃないか?」

「まあね…
でもスペインってイケメン多そうだから羨ましい」


まだまだ若い、探偵を強要されていた少女の顔を思い浮かべる
顔のすぐ横に巨大な骨付き肉を想像してしまうのは不可抗力だと許して欲しい
魔人ネウロがこの世界を去ってから、彼女は長期休暇に海外にほぼ身一つで行ってしまうようになった
『進化し続けたい』という彼女の言葉は、何故だか心の奥をまで響き渡った
彼女のネウロへの感情は、恋でこそないが、誰よりも深い愛情と信頼で出来ているのだと思う


「イケメン…ね」

「ほら、この前のサッカーの中継友達と見たんだけど、スペインの選手イケメン多かったの
私はスイスとドイツもイケメンだったと思う」

「お前…顔が良い男が好きだったっけ?」


衛士が少し冷めた目で私を見る
こいつ無表情とかみんなに言われるけど、滅茶苦茶分かりやすい時あるぞ
入院してからは特に


「んー…何て答えて欲しい?」


にっこりと満面の笑みで返すと、衛士は顔を完全に私とは反対側に向け、これ見よがしにため息をつく
それから再び私に顔を向け、無表情な顔にちょっと怒ったような拗ねたような瞳を見せた


「百合、性格ひん曲がったんじゃない?
昔は素直で可愛かったのに」

「はいはいこんな事で拗ねないで
私が好きになったのは衛士だけですよー」

「……嘘臭い」


またため息をついて、そして頬にキスをひとつ
私の肩に置かれた左手の薬指には、太陽の熱を持ったままの私の指輪と同じ、銀色に輝く指輪がある
















笹塚さん誕生日おめでとうございます
シックスに撃たれず、敵に生かされる人間を観察したいと生き残った未来…的な?
この作品が好きだから捏造はしないぞと思っていましたが、幸せな未来があったって良いじゃないか
何も考えずに書いたから山もオチもない

無神論者の戯言/折原臨也(Dr)

まだ眠気の残る頭を、髪を、優しく撫でられて私の意識はますます遠のきそうになった
瞼を擦って臨也を見ると、初めて見る優しい柔らかい表情をしていて、私は泣きそうになった


「まだ眠たいでしょ?」

「うん、でも、寝たくない」

「うん、そうだね」


臨也は微笑んで瞼の上にキスを落とす
前髪をかき上げて額にも
くすぐったくて、幸せで、私は涙を我慢出来なくなる
目尻に浮かんだ涙を見て、臨也は苦しそうに眉を寄せた


「泣かないでよ」

「…ごめんね」

「お前に泣かれると、どうしていいか分からないから」

「嘘、いつも何でも分かってますって顔してる」

「だから…、お前は特別なんだよ馬鹿」


なんだか恥ずかしくて誤魔化すように冗談を言うと、臨也は拗ねた顔をした
臨也は普段憎たらしい位大人なのに、時々すごく子供みたい
それが可愛くて私から臨也を抱き締めた
腕に臨也の手触りの良い髪が触れる


「…今日、泊まってきなよ」

「無理だよ」

「何で」

「だって、あの子達が心配だもん」

「別に大丈夫でしょ」

「もう、まだ小学生なんだよ?」


私が唇を尖らせて言うと、良くなったはずの臨也の機嫌は急降下した
への字にした唇と睨むような鋭い瞳に見つめられる
それでも剥き出しの背中に触れる手は離れない


「せっかく恋人になれたのに、今日位俺だけに構ってくれても良くない?」

「でも、お父さんもお母さんも出張で居ないの知ってるでしょ」

「あいつらなら大丈夫だってば」

「そんなに言うなら臨也が家に戻ってくればいいじゃない
そしたら私と一緒に居られるしあの子達の面倒も見れる」

「それは無理だよ、分かるだろ
実家で本格的な情報屋稼業なんて出来るわけない」


それに、あいつらが依音を俺に譲ってくれるとは思えないから、と臨也は嫌そうに言った
成人した立派な大人なのになんて我が儘なんだと思う反面、私を独占したいと言ってくれているのが嬉しいだなんて、私は相当頭がイカレているのだろう
それを隠したくて、悟られたくなくて、私はまた意地悪をしたくなる


「ほら、やっぱり私よりも情報屋を取るんじゃない
私より『人間』が好きなんでしょ」

「依音…」

「特別だなんて言っておいて酷い」


臨也の首から腕を離し、ベッドの上で体を反転させた
私の目に映るのは人形みたいに綺麗な臨也の顔じゃなく、飾り気のない部屋の扉になる
どんな反応をするのか待っていると、臨也は私の背中にぎゅっと抱き付いて来た


「ごめん依音
俺は人間が好きだよ、でも依音は特別なんだ
幸せにしたいって思ってる」

「…ほんと?」


私が顔を少し後ろに傾けると、臨也は幸せそうに優しく笑っていた


「うん、神に誓ってもいいよ」

「無神論者なのに?」

「まあね」


悪戯っ子みたいに口角を上げて、臨也は肩を竦めた
私と同じ真っ赤な瞳は、臨也の体中を駆け巡る激情の血の色なんだろう
さっきとは違う、『人間』に見せる酷薄な笑みが浮かぶ
凍てつく視線は、噴き出す鮮血と同じ位熱い
熱くて、私はどろどろに醜く溶けてしまう
溶けて臨也とひとつになるのだ




「神様が居るんなら、俺と依音を兄妹になんてしないだろ?」




真っ赤な瞳が閉じられないまま、兄は妹にキスをした













前に書いた臨也の妹の話の続編
あれ静雄夢ってなってたけど別に妹ちゃんが静雄を好きになって臨也を忘れたいわけでも、静雄が妹ちゃんに惚れたわけでもなかったのです
臨也が妹ちゃんに冷たかったのは兄妹なのに愛してるから

この二人は二人の基準で幸せになると思う

血と罪/平和島静雄(Dr)

傷付いた顔で彼女は言った
『好きになってもらいたいわけじゃないんです』
それが強がりだなんて、俺でも分かった



放課後、教室や廊下の掃除をする当番や、部活に向かう奴、友達と話し込む奴でガヤガヤと喧しい時間帯
俺は一人食堂に向かっていた
食堂に行く為に歩かなければならない渡り廊下はジメジメとした暑さがして、額の汗を拭う
自販機で何か飲み物を買って、すぐに帰ろう
帰り道コンビニに寄ればいい話なのだが、高校生には十円安いだけでも貴重なのだ
辿り着いた食堂の入り口には女が居た
真っ白な肌に真っ黒な髪、真っ赤な瞳、桜色の頬と唇の女
現実味のない美しさで、六月のむせかえるような暑さを一切感じさせない女
俺の天敵、折原臨也の妹…折原依音だった

何も感じなそうな無表情を、俺は無視して食堂に入ろうとした
そうすると依音は何故か俺の後に付いて食堂に入った
何も話しかけて来ないからそのまま無視して小銭を入れて、ボタンを押す
腰を折って缶ジュースを取り出すと、ようやく依音が声をかけて来た


「静雄さんは、見ていましたか?」

「…何を?」

「あれ、意外と知られていないんですか
私昼に静雄さんの学年の女子に絡まれていたんですが」

「ああ、あれか」


依音は相変わらずの無表情で言葉を紡いだ
臨也と兄妹でも、依音は女だからなのかそんなに臨也と顔も声も似ていない
もし依音が男だったら俺はイラついて依音と話せなかっただろう


「見てたも何もうちのクラスの目の前だったからな」

「そうですね」

「大丈夫だったのか?」

「はい、ちょっとスカートが汚れました」


昼休み、偶然うちのクラスの前を通りかかった依音を、同級生の女子十人程が取り囲んだ
依音は美人だ、誰が見てもそう思うだろう
顔が良いところだけは臨也に似てる
だからひがまれて絡まれたらしい
殴りかかって来た女子をボコボコにしていたが、それでも依音は美人だった


「兄は、何か言っていましたか」

「は?」

「絡まれた私を見て、何か言っていましたか」


依音は無表情でそう言った
表情は変わらなかったが、その赤い瞳だけは縋るような、寂しい目をしていた
俺は何で依音がそんな目をするのか分からないが、聞かれた事には嘘なく答えた


「何も」

「……」

「新羅がお前が絡まれてるって言っても、鬱陶しそうな顔で『あいつは大丈夫』しか言わなかった」

「…そうですか」


依音は今度こそ表情を変えた
打ちひしがれたような、諦めたような、堪えられないような
泣きそうな、悲しい顔をした
その顔を、俺は知っている
その表情の意味を


「お前、あいつが好きなのか」

「………」

「兄妹なのに、好きなのか」


依音は何も言わなかったが、俺の目を真っ直ぐに見て、寂しく笑った
兄妹なのに笑い方は全く違った
その顔が哀れで、俺は依音を抱き寄せた


「同じ気持ちじゃなくていいんです」

「……」

「好きになってもらいたいわけじゃないんです」

「ああ」

「ただ、兄妹としてで良いから、気にかけてほしい、笑ってほしい」

「…ああ」

「そう思う事は罪ですか?」


俺が抱きしめる腕に力を入れても、依音は何も言わなかった
抱き返すわけでもなく、拒むわけでもなく、依音はただ俺に抱きしめられていた
泣きもしなかった
俺はきっと涙も枯れたのだろうと思った











読み返してないからどういう話になってるか自分でも分かっていない
臨也は珍しく折原臨也という人間として妹に接しています
人間観察はせず妹の為を思って冷たく接する臨也ってどうでしょう
私は気持ち悪いと思います(笑)

来神時代/平和島静雄(Dr)

「久しぶりだね平和島君、とりあえずすんげぇムカついたから大人しく殴られろ」


二つ隣のクラスの一番後ろの窓際の席で岸谷とお昼ご飯を食べていた他よりも頭一つ分高くにある綺麗な金髪に向かって私は言い放った
平和島の向かいに座って女子っぽい小さな弁当箱をつついていた岸谷は呆然としてから好奇心を隠さないキラキラした良い表情で私を見ていた
そういえば岸谷は小学生の時によく平和島に向かってこんな表情をしていたっけ
別段懐かしくもなんともない思い出が頭をよぎったが、私は平和島から目を逸らさなかった
野生の動物からは目を逸らしてはいけないとよく言うから、野生の熊より数倍の破壊力を持つこいつから決して目を逸らさなかった


「…あー、悪いが、殴られる心当たりがねぇ」


頭に血が上りやすい平和島にあんな事を言ったものだから、私と岸谷以外の人間は即行顔を真っ青にして教室から非難した
入り口からみんなこちらを伺っている
止めて、そういうあからさまな態度は平和島を噴火させる一因になりかねないから
衝撃発言をしたばかりの私が言うのは可笑しいが
こいつが簡単に女に手を上げたり机を投げたり標識でぶっ飛ばしたりしない事を私は知っている
もちろん岸谷も


「平和島君ちょっと前まで喧嘩してたみたいだね、一組で」

「あ?そうだけど…」

「そのおかげでね、私と友達の机壊滅しちゃってんだよねー
携帯机の中に入れっぱなしだったから携帯もダメになってるし教科書ズタズタだし鞄は引きちぎれてるしさ…」

「………」

「どうしてくれんの?」


私は滅多にしないスマイルをサービスしてあげた
友達と少しの間食堂に行ってアイスを買って教室に戻ったら綺麗に私と友達の机だけ壊滅状態だったのだ
隣の席の折原に『シズちゃんがやったんだよ』と薄ら笑いで教えられた
友達は止めなよって言ったけどどうしたって我慢出来ない
殴られようが蹴られようがとりあえず文句を言ってやりたかった
平和島はバツが悪そうに目を逸らした
廊下でビクビクと事の成り行きを見守っている連中の息を呑む音が聞こえる
とにかく私は平和島が次にどう出るか待っていたが、平和島は頭をガシガシと掻くばかりだった
そこでようやく岸谷が口を挟んだ


「まあまあ、静雄君に悪気があったわけじゃないんだから
君もそんな怖い顔しないであげてよ」

「私だって来神最強に喧嘩売る事になると思わなかったわ」

「おや、僕はてっきり彼がヤクザ者も厄介がってる来神の喧嘩人形だと知らないのかと思ってたよ」

「死にたいか新羅」

「謹んでお詫び申し上げます」


平和島が一睨みしたら岸谷は机に手を付いて額を机に擦り付けた
ただの変人に見えて岸谷は上手に世間を渡っていけると思う


「あー……名前、なんつうんだあんた」

「久坂」

「久坂、机と携帯と教科書と鞄…だっけか?
ほんと、悪かった」

「………」

「教科書は俺の貸してやっから、他のもんは後で弁償する」

「…ふざけた事抜かしてんじゃねぇぞ」

「……え?」

「久坂…さん?」


平和島のしおらしい言葉に岸谷も入り口からこちらを伺っている野次馬共も、安堵の息を吐いていた
でもね、私はそういう事を求めてたんじゃないの
違うんだよ


「今みたいに平和的に解決出来るんなら、何で普段からしないの!
キレたらついやっちゅうのは知ってるけど、努力しろ馬鹿!
そんなんだからあのムカつく眉目秀麗野郎に嵌められるんだよ!」

「な、何怒ってんだ…?」

「眉目秀麗野郎って、臨也の事…だよね」


平和島と岸谷はまた目を丸くしていた
ついでに言うと、私は叫んだ時に懇親の力で平和島を殴った
だが平和島はビクともしないし殴られた事に気付いているかも怪しい
そして殴ったはずの私の右の拳に激痛が走ってるのは何でだ


「平和島は良いやつなのに…周りに理解される事諦めてんじゃねぇよ…!
早く折原潰せよムカつくんだよあいつ!」


平和島は頭がちょっとアホだから、殴られた事に気付く前にと私は言いたい事を言ってマッハで逃げた
入り口の野次馬は私にぶつかる事なく上手に道を開けてくれた
平和島はすぐキレるけどすぐ鎮火する
それを心の支えに今週を生きよう、それもとびきり大人しく


「ねぇ静雄、今思い出したんだけど」

「…あ?」

「久坂さんって、もしかして君の家の三軒隣の久坂さん?」

「……あ」

「私とは小学校が一緒だった、君とは小学校と中学校が一緒の久坂さん?」

「…だよ、な」

「君が小学生の時片思いしてたぐへぼッ!」

「へ、変な事言うんじゃねぇ!」


静雄は否定の言葉を真っ赤な顔で吐き出したが、静雄に頭突きを喰らわされた新羅の意識は既になかった








実は幼なじみなんですヒロイン
すごく臨也が嫌いな設定になったが臨也と何があったんでしょうね

最近着地点を決めないまま書き始めるからふわっふわしたままオチもない萌もない何もないものしか書けない

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