スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

血と罪/平和島静雄(Dr)

傷付いた顔で彼女は言った
『好きになってもらいたいわけじゃないんです』
それが強がりだなんて、俺でも分かった



放課後、教室や廊下の掃除をする当番や、部活に向かう奴、友達と話し込む奴でガヤガヤと喧しい時間帯
俺は一人食堂に向かっていた
食堂に行く為に歩かなければならない渡り廊下はジメジメとした暑さがして、額の汗を拭う
自販機で何か飲み物を買って、すぐに帰ろう
帰り道コンビニに寄ればいい話なのだが、高校生には十円安いだけでも貴重なのだ
辿り着いた食堂の入り口には女が居た
真っ白な肌に真っ黒な髪、真っ赤な瞳、桜色の頬と唇の女
現実味のない美しさで、六月のむせかえるような暑さを一切感じさせない女
俺の天敵、折原臨也の妹…折原依音だった

何も感じなそうな無表情を、俺は無視して食堂に入ろうとした
そうすると依音は何故か俺の後に付いて食堂に入った
何も話しかけて来ないからそのまま無視して小銭を入れて、ボタンを押す
腰を折って缶ジュースを取り出すと、ようやく依音が声をかけて来た


「静雄さんは、見ていましたか?」

「…何を?」

「あれ、意外と知られていないんですか
私昼に静雄さんの学年の女子に絡まれていたんですが」

「ああ、あれか」


依音は相変わらずの無表情で言葉を紡いだ
臨也と兄妹でも、依音は女だからなのかそんなに臨也と顔も声も似ていない
もし依音が男だったら俺はイラついて依音と話せなかっただろう


「見てたも何もうちのクラスの目の前だったからな」

「そうですね」

「大丈夫だったのか?」

「はい、ちょっとスカートが汚れました」


昼休み、偶然うちのクラスの前を通りかかった依音を、同級生の女子十人程が取り囲んだ
依音は美人だ、誰が見てもそう思うだろう
顔が良いところだけは臨也に似てる
だからひがまれて絡まれたらしい
殴りかかって来た女子をボコボコにしていたが、それでも依音は美人だった


「兄は、何か言っていましたか」

「は?」

「絡まれた私を見て、何か言っていましたか」


依音は無表情でそう言った
表情は変わらなかったが、その赤い瞳だけは縋るような、寂しい目をしていた
俺は何で依音がそんな目をするのか分からないが、聞かれた事には嘘なく答えた


「何も」

「……」

「新羅がお前が絡まれてるって言っても、鬱陶しそうな顔で『あいつは大丈夫』しか言わなかった」

「…そうですか」


依音は今度こそ表情を変えた
打ちひしがれたような、諦めたような、堪えられないような
泣きそうな、悲しい顔をした
その顔を、俺は知っている
その表情の意味を


「お前、あいつが好きなのか」

「………」

「兄妹なのに、好きなのか」


依音は何も言わなかったが、俺の目を真っ直ぐに見て、寂しく笑った
兄妹なのに笑い方は全く違った
その顔が哀れで、俺は依音を抱き寄せた


「同じ気持ちじゃなくていいんです」

「……」

「好きになってもらいたいわけじゃないんです」

「ああ」

「ただ、兄妹としてで良いから、気にかけてほしい、笑ってほしい」

「…ああ」

「そう思う事は罪ですか?」


俺が抱きしめる腕に力を入れても、依音は何も言わなかった
抱き返すわけでもなく、拒むわけでもなく、依音はただ俺に抱きしめられていた
泣きもしなかった
俺はきっと涙も枯れたのだろうと思った











読み返してないからどういう話になってるか自分でも分かっていない
臨也は珍しく折原臨也という人間として妹に接しています
人間観察はせず妹の為を思って冷たく接する臨也ってどうでしょう
私は気持ち悪いと思います(笑)

来神時代/平和島静雄(Dr)

「久しぶりだね平和島君、とりあえずすんげぇムカついたから大人しく殴られろ」


二つ隣のクラスの一番後ろの窓際の席で岸谷とお昼ご飯を食べていた他よりも頭一つ分高くにある綺麗な金髪に向かって私は言い放った
平和島の向かいに座って女子っぽい小さな弁当箱をつついていた岸谷は呆然としてから好奇心を隠さないキラキラした良い表情で私を見ていた
そういえば岸谷は小学生の時によく平和島に向かってこんな表情をしていたっけ
別段懐かしくもなんともない思い出が頭をよぎったが、私は平和島から目を逸らさなかった
野生の動物からは目を逸らしてはいけないとよく言うから、野生の熊より数倍の破壊力を持つこいつから決して目を逸らさなかった


「…あー、悪いが、殴られる心当たりがねぇ」


頭に血が上りやすい平和島にあんな事を言ったものだから、私と岸谷以外の人間は即行顔を真っ青にして教室から非難した
入り口からみんなこちらを伺っている
止めて、そういうあからさまな態度は平和島を噴火させる一因になりかねないから
衝撃発言をしたばかりの私が言うのは可笑しいが
こいつが簡単に女に手を上げたり机を投げたり標識でぶっ飛ばしたりしない事を私は知っている
もちろん岸谷も


「平和島君ちょっと前まで喧嘩してたみたいだね、一組で」

「あ?そうだけど…」

「そのおかげでね、私と友達の机壊滅しちゃってんだよねー
携帯机の中に入れっぱなしだったから携帯もダメになってるし教科書ズタズタだし鞄は引きちぎれてるしさ…」

「………」

「どうしてくれんの?」


私は滅多にしないスマイルをサービスしてあげた
友達と少しの間食堂に行ってアイスを買って教室に戻ったら綺麗に私と友達の机だけ壊滅状態だったのだ
隣の席の折原に『シズちゃんがやったんだよ』と薄ら笑いで教えられた
友達は止めなよって言ったけどどうしたって我慢出来ない
殴られようが蹴られようがとりあえず文句を言ってやりたかった
平和島はバツが悪そうに目を逸らした
廊下でビクビクと事の成り行きを見守っている連中の息を呑む音が聞こえる
とにかく私は平和島が次にどう出るか待っていたが、平和島は頭をガシガシと掻くばかりだった
そこでようやく岸谷が口を挟んだ


「まあまあ、静雄君に悪気があったわけじゃないんだから
君もそんな怖い顔しないであげてよ」

「私だって来神最強に喧嘩売る事になると思わなかったわ」

「おや、僕はてっきり彼がヤクザ者も厄介がってる来神の喧嘩人形だと知らないのかと思ってたよ」

「死にたいか新羅」

「謹んでお詫び申し上げます」


平和島が一睨みしたら岸谷は机に手を付いて額を机に擦り付けた
ただの変人に見えて岸谷は上手に世間を渡っていけると思う


「あー……名前、なんつうんだあんた」

「久坂」

「久坂、机と携帯と教科書と鞄…だっけか?
ほんと、悪かった」

「………」

「教科書は俺の貸してやっから、他のもんは後で弁償する」

「…ふざけた事抜かしてんじゃねぇぞ」

「……え?」

「久坂…さん?」


平和島のしおらしい言葉に岸谷も入り口からこちらを伺っている野次馬共も、安堵の息を吐いていた
でもね、私はそういう事を求めてたんじゃないの
違うんだよ


「今みたいに平和的に解決出来るんなら、何で普段からしないの!
キレたらついやっちゅうのは知ってるけど、努力しろ馬鹿!
そんなんだからあのムカつく眉目秀麗野郎に嵌められるんだよ!」

「な、何怒ってんだ…?」

「眉目秀麗野郎って、臨也の事…だよね」


平和島と岸谷はまた目を丸くしていた
ついでに言うと、私は叫んだ時に懇親の力で平和島を殴った
だが平和島はビクともしないし殴られた事に気付いているかも怪しい
そして殴ったはずの私の右の拳に激痛が走ってるのは何でだ


「平和島は良いやつなのに…周りに理解される事諦めてんじゃねぇよ…!
早く折原潰せよムカつくんだよあいつ!」


平和島は頭がちょっとアホだから、殴られた事に気付く前にと私は言いたい事を言ってマッハで逃げた
入り口の野次馬は私にぶつかる事なく上手に道を開けてくれた
平和島はすぐキレるけどすぐ鎮火する
それを心の支えに今週を生きよう、それもとびきり大人しく


「ねぇ静雄、今思い出したんだけど」

「…あ?」

「久坂さんって、もしかして君の家の三軒隣の久坂さん?」

「……あ」

「私とは小学校が一緒だった、君とは小学校と中学校が一緒の久坂さん?」

「…だよ、な」

「君が小学生の時片思いしてたぐへぼッ!」

「へ、変な事言うんじゃねぇ!」


静雄は否定の言葉を真っ赤な顔で吐き出したが、静雄に頭突きを喰らわされた新羅の意識は既になかった








実は幼なじみなんですヒロイン
すごく臨也が嫌いな設定になったが臨也と何があったんでしょうね

最近着地点を決めないまま書き始めるからふわっふわしたままオチもない萌もない何もないものしか書けない

前の記事へ 次の記事へ