2013-1-21 20:09
どこにでも繋げるトリップものの序章。
※男主人公?に分類されると思いますので注意。
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朝起きたら大変な事になっていた。
先に言っておくが、私は目を覚ますまでは華の女子高生だった。
更に言えば、腐った女子である。再来年の誕生日に薄くて濃い本を購入するのを楽しみにしていた腐女子である。
それが起きてみれば。
「どうしてこうなった…」
リアルで使うことを自重していた言葉が口をついて出た。まさにそれである。
ことの次第――と言えるほどのものでもないかもしれないが――はこうである。
朝起きたら、なぜだか見知らぬ部屋のベッドに寝転んでいた。
その時には「寝かされていた」という認識でいたのだが、犯罪を想起するにはその部屋はどうにも生活感がありすぎる。
混乱は、充分に覚醒して自分が寝ぼけているわけでも夢の中にいるわけでもないことを自覚してから訪れた。
それでもとにかく状況を確認しようとベッドから降りて歩いてみれば、まあ躓くわ躓くわ。
視点もいつもと違うし、体の重さも歩幅も違和感まみれだ。
どうやら現在地がなかなかオサレなマンションの一室らしいと認識しながら辿り着いた脱衣所。
洗面台の鏡を見て、今度こそ私は悲鳴を上げた。
誰が想像できるだろうか。
ある朝自分が突然長身のイケメンに変身してしまうなどと。
しかも男らしいカッコイイ系の男子である。美人ではないが普通に女性的な顔立ちだったはずの私の面影など、どこにもなかった。
「どうしてこうなった…」
重ねて言う声は、程好く低い所謂イケボ。本当に恵まれた体である。
そして極めつけは、ダイニングのテーブルに置かれていたノートパソコンに鎮座する開かれっぱなしのテキストファイル。
「『あなたに新しい人生を。片道大変身の旅』…」
まあ、そう、アレだ、不可思議な創作小説のお約束。
どうやら私は、新しい人間として生きなければならないらしい。
起き抜けに夢ではないと思ったものの、これは夢であることを期待せざるを得ない。
夢であれなんであれ、もう少し状況を見なければいけない。
私は新しい自分とやらの身分を知るべく、部屋を物色することにした。
私はまだ知らない。
この後に更なるお約束展開が待ち受けていると。