虎次「未来からやってきた息子と世界の命運をかけて戦う夢を見た……」
人形師「おまえに未来が救えるとでも?」
ミヤコ「あんたに子供が作れるとでも?」
虎次「夢くらい好きに見させろよ!!」
翠「どんな夢だったんだ?」
虎次「いやぁ、仕事のあと急に若いのに絡まれて、そいつが俺の息子だって言い張るんスよ。逃げるに逃げられなくて話を聞いてたら……」
・・・・・
・・・
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虎次「で、仮にお前が俺の息子だとして、未来を変えるために何をしようってんだ」
息子(仮)「ボクと協力してこの時代の死神を倒し――待って! 父さんの力が必要なんだ!」
虎次「無茶言うな馬鹿野郎。あと父さんって呼ぶな」
(仮)「このままだと云年後に父さ……あなたは死んでしまうんだよ!」
虎次「いま死ぬよりいいわ!」
息子(仮)「父さん!」
虎次「るせぇよ! そんなに言うなら母親はどうなんだよ、誰なんだよ!!」
(仮)「それは……、言えない。だけど近い未来、男女のつがいで無くても生殖が可能になることは知っておいてほしい」
虎次「あァ?! なんでそれは言った?! その情報は要らなかったよな!?!?」
虎次「とりあえず藍さんに真偽を確かめてもらいてぇな……」
息子(仮)「! そうかこの時代にはまだ師匠も」
虎次「は?」
(仮)「あっ、しまった、忘れてください」
虎次「待て待て待て待て無茶言うな、藍さんが? 師匠?? 人選ミスだろぉおお」
(仮)「ストレートな感想ですね!」
息子(仮)「どうしても信じてもらえないって言うなら……、これを見てください!」
虎次「そ、それは!」
(仮)「父さんが最後まで大事に育てていた糠床です!!」
虎次「もうちょっと格好いいものは無かったのかな?!」
(仮)「糠漬けは作り手の味が出るから分かりやすいかと思って。いまキュウリが食べ頃です!」
虎次「どうりでなんか匂うと思ってたんだよ……、というか俺最期まで糠漬け作ってたのかよ……、」
息子(仮)「よく聞いて。死神はこの時代、遺伝子操作によって恐竜をよみがえらせようとしているんだ。ところがその過程で生まれた化け物による事故のせいで研究施設は破壊され、解き放たれた未完成品の群れが世界を滅ぼそうとする。その事故が起こるのが明日。明日なんだ。だからボクの『ひとを蟻のサイズに出来る能力』で研究施設に乗り込んで阻止しなければならないんだよ。不可能なミッションかもしれないけどボクと父さんなら」
虎次「なんなんだよ!」
(仮)「未来だよ!」
虎次「映画館行けよ!」
息子(仮)「はぁ。そんな冗談はさておき」
虎次「あァ?!」
(仮)「通信が来ていますよ。うわぁ、こんな旧式の通信機が動いているところ、初めて見ました」
虎次「くっそ、――はい」
翠『おう。トラブルか?』
虎次「翠さん!!」
(仮)「!」
虎次「すみません、いやぁ、それが実は斯々然々で」
翠『そうか、電波野郎に絡まれてるのか
虎次「的確なご理解痛み入ります」
翠『一発落として来い』
虎次「俺もそうしたいんスけど……、妙にこっちの事情に詳しいんですよ。藍さんのこととか糠漬けとか」
翠『……。待ってろ』
虎次「お前のせいで俺がため息つかれたじゃねぇか」
息子(仮)「ミドリ、って師匠のきょうだいの!」
虎次「もう藍さんが師匠ってのは認めるんだな」
(仮)「はい。翠さんのことはお話でしか聞いたことがなかったので、お会いできるなら嬉しいです」
虎次「なんで会ったことがないのかは言わなくていいからな」
(仮)「ボクが弟子入りする前に亡くなっ」
虎次「言わなくていいからな!!」
虎次「ちなみに……藍さんは翠さんことをなんて? 喧嘩してるところしか見ねぇんだけど」
息子(仮)「師匠はあんまりそういうことを話してくれる人ではないんですけど、バカなヤツだって。だから死んだんだって、寂しそうに言っていたことがあるんです」
虎次「お前聞きたくないことだけをピンポイントで聞かせてくるよな」
ドゥルン ドッドッドッドッド
虎次「翠さん!」
息子(仮)「あなたがみど……師匠!!」
翠「これか」
虎次「はい」
翠「かなりきてるな」
虎次「そうなんすよ」
息子(仮)「師匠、師匠!!」
虎次「うるせぇ、お前の師匠は藍さんなんだろうが!」
(仮)「そうですけど、ボクが師匠を間違えるわけがありません!」
虎次「まあそんなに似てないしなあ」
(仮)「師匠、父さんから説明は聞いていますよね、協力して未来を変えましょう」
翠「なるほど分かった。すぐ楽にしてやる」
虎次「なんて話の早い」
翠「目が覚めたらそこがお前の望む未来だ、よかったな」
息子(仮)「待って、待って! 〜ッ、リング!!」
翠「あァ?」
(仮)「怒られるから言いたくなかったんだけど……。師匠がいつも首から下げてるそれ。気になったのでこっそり見ました。ごめんなさい。ペアリング、だよね。片方は明らかに女性用のサイズだった」
翠「、」
(仮)「内側に彫られたメッセージは『M to A』――」
翠「もういい」
虎次「翠さん、」
翠「いまリングはひとつしか無いが、……このことはごく限られた人間しか知らないはずだ。本編にも出てねぇ」
虎次「この重要そうな場面で本編とか言うの止めてくれません?」
息子(仮)「信じて、くれますか」
翠「お前――……伏せろ!」
虎次「うわッ! なん、銃撃?!」
??「対象を捕捉。第三者との接触を確認。確保に移行します」
(仮)「あれは、時空管理局の強制執行官で、ボクを追ってきたんだ!」
虎次「はァア?!」
翠「急にSFに寄ったな」
息子(仮)「せっかく父さんに会えたのに、またあんな未来に戻るわけにはいかない、それに」
虎次「それに」
(仮)「執行官に捕まったら、知るべきではない未来を知ってしまったあなたは消されてしまう」
虎次「……記憶を?」
(仮)「楽観的ですね」
虎次「チクショウ!!」
虎次「ふざけんなテメーそういうことを真っ先に説明しろよ! どうしてくれるんだ!」
息子(仮)「ここはうまく逃げるしかないけど、」
翠「俺が引き受ける」
虎次「翠さん?!」
翠「お前たちはシオンに会え。会って能力との干渉を絶てば分かることもあるだろう。俺もすぐ追いかける」
虎次「なんて華麗なフラグ建設なんだ……」
息子(仮)「いくら師匠でも無理があります、執行官の素体は、」
翠「おい、お前の『師匠』ってのは、どんな奴だ」
(仮)「…………強くて厳しくて、大切なことは話してくれなくて、でもボクのことやもっと大きなことをいつも考えてくれていて、頼りになって、――格好つけるのに肝心なところで外します」
翠「そうか。それはもしかしたら本当に――」
虎次「あんたそれでいいのかよ」
翠「行け!」
執行「制止を命じます。警告は三度までです。制止を命じま、――悪意の妨害を確認。行為者は第三者。照合エラー。参照範囲を上位に拡大せよ。参照完了。行為者は『特異点・翠』。第四武装の解放を申請します」
虎次「翠さんが『藍』を名乗って俺の息子の師匠になっていて、『翠』はすでに死んでいる……? 死んだのは誰なんだ? なんだってそんなこと? もうなんなんだよ、」
息子(仮)「ボクが変えたい、未来ですよ」
追記に続く