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給食のおにいさん 卒業

佐々目が給食調理室をいつ辞めても良いように、毛利は長いこと調理員をしてくれているパートさんを、昇格するよう後押しした。それを聞いた佐々目は、契約終了の3月いっぱいで仕事を辞め、シェフへ戻ろうと考える。給食のおにいさんの卒業は近い。

今まで自分と同じ立場で働いていたパートの一人が昇格した事で、佐々目がいなくなった後、給食が美味しくなくなったと言われないように…とはりきり、飾り切りなどを取り入れようとし、他のパート職員との連携が上手くいかなくなり始める。
そこで毛利は、佐々目が給食調理員暦のながいパートから、短い時間で大量に作らなければならないという特殊なリスクに慣れるという名目で、教えを請う立場へと、毛利により采配される。
そこで佐々目は、佐々目の真似ばかりしようとし、結果失敗するのを見て、一家の主婦でもあるその職員が得意なことをしてみては?と提案する。家族のためにおにぎりを毎日握っていたという職員は、残飯率でも比較的高い白いご飯をおにぎりにし、残飯率を下げることに一役買ったのだ。

給食費が未納であり、佐々目が働くS区では最終的に未納の家庭に対し、裁判を起こす事を知り、子供が心を痛めない様、未納分を支払ってくれと働きかけている毛利を見て、給食調理員から、教諭になろうと頑張っている毛利が安心して試験勉強に励む為、給食費の未納問題を、佐々目が請け負おうと決める。
お金が無くて払えないのではなく、税金を支払っているから給食費は払う必要がないと主張する親に、本当は給食費を払ってほしいのに、家では押さえつけられてなんの主張も出来ない鬱憤を、学校で発狂する事で発散している少女、そして、魔法という偽りの世界に逃げ道を求めている少年を、フレンチのシェフらしく、料理で気持ちを立て直させる。

また、シェフとしてやっていきたいが、ブランクもある佐々目はホテルの調理場でアルバイトとして、下積みからまた始めていた。どこの店からも断られ、いつしか佐々目は自分ひとりで全てをまかなえるような、小さな店を自分で持ちたいと考え始めていた。その想いを出入りのこんにゃく業者であったおばあちゃんに話したところ、おばあちゃんに、それは自分のような余生を送る人の生活だと言われてしまう。若い佐々目はそんなところで腐っていてはいけない、と。

晴れて教諭となった毛利は、子供達の手本となるよう、少しずつ自らの食事の取り方さえも変えていった。そして、佐々目の代わりに調理員として入ってきたのは打っても響かない若い児玉で、当然調理員達とも上手くいかない。何とか自分が退職するまでに調理員として慣れて欲しいと教育するが、どうにも響かない児玉に悪戦苦闘する。

佐々目が辞める3月に入ってからも、次の就職先は決まっていなかった。もともと下働きのアルバイトとして入っていたホテルの契約社員の職に応募した佐々目は、面接で正社員として働かないかといわれ、迷う。自分がやりたいと思っていたメインではないからだ。
しかし、毛利や給食調理員を通して出会った子供たちを見て、こだわりは捨て、でも、希望だけはしっかり伝えて応募し、正社員としてホテルで働けることとなった。

給食調理員として最後の仕事は、あえて自分が腱鞘炎になったと仮病を使い、児玉と他の調理員達がぶつかりながらもしっかり仕事をするのを見届けた。
そして、佐々目は毛利への感謝を述べ、ホテルの新人として働き始める。

ミスをして怒られ、まかないもノドを通らないほどだった佐々目に、面接時、正社員にならないかと言ってくれたシェフがある手紙を返してくれる。それは、佐々目が夢を叶えられるよう、ホテルのシェフになれるように、毛利が書いた推薦状だった。

“佐々目は最高の調理員でした。当方にとって、かけがえのない存在でした。もしも万が一、佐々目が御社を辞め、当方に戻ってくるのならば、当方は佐々目を喜んで迎え入れます。でもきっと、そんなことはないでしょう。”

初めて読んだ、毛利の佐々目への気持ち。
それは佐々目を奮い立たせるのであった。

『給食のおにいさん 卒業』
著者 遠藤彩見
発行元 株式会社幻冬舎
ISBN 978-4-344-42229-2

毛利の推薦状あたりでもう涙が止まらなかった。佐々目のように頑張った人には、必ず誰かが支えになってくれる。そんな奇跡を見れて、本当に良かった。

給食のおにいさん 進級

給食のお兄さんこと佐々目は、2年目に入りだいぶ給食という世界にも慣れ、やりがいを感じてきていた。むくれながら仕事をしていた頃と違う顔つきを見て、保護者の給食試食会へ佐々目を同行させる事に決めた毛利。
そこで佐々目はいただきます等の挨拶をさせたりする事が、個性を潰すのだという考えの母親と対立してしまい、毛利に大目玉を喰う。

父子家庭であるので夜型の生活になってしまっている子を何とかしたいと思った毛利は、正攻法で父に噛みついてしまい、分かってはいるが何をしたら良いか、またその余裕もない父とわかり合えず、決裂してしまう。

そこで佐々目はお腹がすいている時に食べる朝ごはんは、例え普通のオニギリでも美味しいのだと実践してみせる。佐々目には佐々目のやり方があると毛利は認める。

食べ物でのいじめを見て憤慨する佐々目は、給食時間が楽しいと言っている事こそ、クラスで子供が上手くやれている証拠だという子持ちの同僚のおかげで、ヒントが見つかる佐々目。

自分が何をしたいのか、それは佐々目にとっても子供達にとっても同じテーマだった。

「私には何もなかった。だから、みんな昔の私しか見てくれなかった。何か新しい事をしないと、新しい自分にはなれないんだ」

シェフになりたい佐々目の背中を押した毛利に、佐々目はいじめにうち勝とうとする少女と共に、踏み出す一歩となった。

『給食のおにいさん 進級』
著者 遠藤彩見
発行元 株式会社幻冬舎
ISBN 978-4-344-42176-9

給食の片付け、食べ方のマナー、そして同僚に焦点を当てる。安心の2巻でした。
シェフへの気持ちを固めたはずの佐々目が、また悩み出している。まぁ人間ってそういうものではあるけれど、ちょっとしつこいかなぁとも思った。

給食のおにいさん

安全で栄養のある料理を提供する事が第一だという学校給食の世界に、調理員として働く事になったフレンチのシェフ・佐々目。大人向けの料理しか作った事のない佐々目は、味や彩りを重視する考え方が身に染み付いているので、子供の舌には合わず苦労する。

保健室登校をしている児童に給食を届けた佐々目は、食べ物で遊び、少ししか手をつけない児童に、何とかして給食を食べさせようとする。保健室の先生に頼み、宝箱を開けるのが好きだと聞き出した佐々目はそれをヒントに、野菜をハートや星形にカットしたものを中に仕込んだくじ引きハンバーグを作る。
中身の違いでケンカするほど興味を持ってもらえ、保健室登校の児童も喜んで食べてくれた。

ネグレクトで一日給食以外食べ物にありつけない事がままある児童に、えらく肩入れしている管理栄養士の毛利は、残った給食を持たせていた。児童にどうしても困ったらと500円玉まで持たせている毛利の行動を知り、毛利もかつて、ネグレクトの親に育てられて苦労したのだと気付いた佐々目。佐々目自身もそんなに親と仲が良い方ではなかったが、ケンカして冷戦状態の日であっても、三度のごはんが出てこなかった事はなかった自分の経験では語れない子供の現状を知る。

職場の人間と衝突したり、思ってもみなかった子供の深い傷に触れたりしながら、佐々目は日々、成長する。シェフ給食という企画で元同僚で元彼女のシェフがやって来て、佐々目は自分の将来を考える。

一年契約だった給食の調理員を続けるか、シェフとしてまた一歩踏み出すか…。迷った佐々目は先生から助言を受ける。

「佐々目くんに『給食のおにいさん』を続けたいっていう、前向きな意志があるかどうかなんじゃないかな。
物事はね、消去法で仕方なく決めると、辛い時に気持ちが続かない。人から言われて決めると、失敗した時に相手を恨んでしまう。だから全ては自分の意志で決めないと駄目だよ」

ネグレクトにあっていた児童が、祖母のいる福岡に転校する事になり、なんとかして絆を示したいと思った佐々目は、給食コンテストで優勝し、全国の小学校に佐々目と児童が考えた給食がメニューとして登場するように頑張るが、優勝できない。
落ち込む佐々目は、自分の為ではなく児童の為に、また来年も給食のおにいさんを続ける事に決める。

ドラマになりそうな、軽くて読みやすいものでした。

『給食のおにいさん』
     サエミ
著者 遠藤彩見
発行元 株式会社幻冬舎
ISBN 978-4-344-42089-2
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