車の助手席から見る


流れる道路灯の白い光

遠くに広がる星空

あの日、あの時の彼の姿を重ねあわせてしまって
恋しくて、たまらなくなった


あの人が言った
“一週間こうしたら、きっと、今しんどいのがなくなるはずだよ”と

昨日がその一週間目だった



祈るように目を閉じて待った、8コール後の会話は
『どうしたの?』という問いかけから始まった


「この前の電話の時、課長、全然元気なかったからずっと心配してたんです。」と、正直に伝えた



仕事のこと、ワールドカップのこと、家具のこと

一緒にパソコンを開いて、車のことを調べて
楽しそうにいろんなことを教えてくれる課長は、


あの頃の、優しい課長だった。


たくさん笑って、課長も笑ってくれた


この前の電話が、嘘みたいに

うまくいきすぎた


『自炊してるの?』という話から

食べ物の話題

ラーメンの話をした時に
私の地元のラーメンが、豚骨醤油がベースで 

「課長は、あっさりのほうが好きでしたよね?」

『そんなことないよー!』と、取り繕い出す課長に


「好きですか?」と聞けば

『すきー』と甘えたような声が返ってきて

思わず、笑みがこぼれて
笑い合った


そして、わたしは、
前からずっと行きたいと言っている
お蕎麦屋さんのことを口にした


いつも感じる空気とは、違う、空気

驚くほど、さらさらと、話が進んで


一歩踏み出すために
夏休みのことを話題に出す

「課長、夏休みは8月ですか?」

『うん。今年はお盆の週で希望出したよ』

「どこか行かれるんですか?」

『軽井沢に行く予定かな』


「そうですか、、、。

一週間ずっと、ですか?」

いつもなら
ここで、ダメになる


はずなのに

『まさか(笑)2泊3日くらいかな。』


「!…じゃあ、あの!一日、、空けてもらえませんか?」


『ん?夏休みなの?』

「そうなんです!!3日あって、好きなときに取れるんです。だから、お蕎麦屋連れて行って下さい、、笑」


『前半に軽井沢にいって、姉夫婦が帰ってきたり、、、まぁ大丈夫かな。』

「ほんとですか!やったー!」  

『お蕎麦屋さんだけ?笑』 

「え、、、梅田とかプラプラ、します、か?笑、、あ!でも、ほんとに、何時でも大丈夫ですし、いつでも大丈夫です!!」

『まだシフト出てないけど、了解しました(笑)』

「はい!お願いします!!」

『日帰り??』

「えっと、、それは、日にちと時間によります(笑)」

『そらそうやな(笑)』

「じゃあ、わたしも、お盆休むかもーって匂わせておきます!笑」

日帰り?って、前にオッケーもらった時にも聞かれたけど
一体何を思ってそんなことを聞くの、、?

期待してしまうよ。




それから、課長は
この前の電話のとき元気がなかったから、と私が言ったことに触れた

『今日もそんなに元気ないけどなぁ。でも、そういえば、あの時、いろいろあったなぁ。』

「うーーん、、、この前はほんっとに全然元気なかったから
今日、車のこと楽しそうに話してくれてたので良かったです(笑)」

課長は、笑った。

心配してる、なんて
お前なんかに何がわかる、とか、きもい、とか思われるんじゃないかなって思ってたけど

良かったのかもしれない、ね。



「じゃあ、また、シフト出たら教えてくださいね」

『分かりました。おやすみなさい』 

「ありがとうございます!!おやすみなさい」


23時過ぎから1時半前までの夢のような時間だった



ほんとに、夢のままで終わらないように

課長に、会えますように


 
話題:片想い