学校の帰り道、私は長い長い行列を見つけた。

(新しいお店でも出来たのかな)

そう思って列の隣を歩いたけれど、行けども行けども列は途切れる様子を見せない。

列に並んでいる人は年齢も性別もバラバラだった。スーツを着た人、老人、小学生までいる。

一体何の行列なんだろう、そう思った瞬間だった。

ずっ、と長い列が一歩前へ動いた。あまりに唐突だったから、私は驚いて足を止める。

「入りますか」

掛けられた声ではっと我に返った。

声の方を見ると、淡いピンクのスーツを着たショートボブの女性だった。

彼女の前には1人分の空間が空いている。

「…あの、これは何の列なんですか?」

「入りますか」

彼女は同じ言葉を繰り返す。

「あの」

「入りますか」

「…………」

ぼうっとした瞳で、彼女は私を見つめている。

「入らないんですか」

「だから、何の列なんですか?」

「並べば分かりますよ」

「…………」

1人分だけぽっかりと開いた空間。何故か手招きされていると感じた。

「順番抜かすの、悪いじゃないですか」

「気にしなくていいんですよ。入りますか」

「…………」

じり、と空気が揺らぐ。決断しなければ。この1人分の空間が消える。

「入りますか」

女性が訪ねる。私は即答できない。彼女はゆっくりと私から視線を外すと、一歩前へ―――。

「入ります!」

私は勢いよくその空間へ体をねじ込んだ。





  *   *   *





あれからどれくらいの時が経っただろう。

いや、まったく時が経っていないような気もするし、気が遠くなるような時間を過ごしているような気もする。

もうよく分からない。

列が動くたび、私は一歩一歩と足を進める。

もはや私は私ではなく、何かの生き物の一部になった気すらする。

この列は一体どこへ繋がっているのだろう。どこかへ繋がっているような気もするし、どこにも繋がっていない気もする。

ふと、誰かが隣にいるのに気付いた。進もうとしている足を私は止める。

スーツを着た若い男性だ。私は親切に声を掛ける。

「入りますか」

「気にしないでください。入りますか」

「入らないんですか」

「入りますか」

――――……。

…………。

……。





end.
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勢いで書いた20分クオリティ。
行列って不思議ですよね〜なんか並びたくなる魔法でもかかっているのかな。
どこに繋がってるかとか、ゴールが分からないと不安になるけど。
なんとなく書きたかっただけなので意味も何もないよ!!
さて、一体どこに繋がってるんでしょうね、この列は。