am12:55
「ねぇ、渚。社会科の授業って、何か意味あるのかな。」
お弁当のミートボールを口に入れ、薫は何気なく問う。しかし、あまりに答えが見えていた質問だったので、つい渚の箸は止まる。
「いや、そりゃああるでしょう。世界がどんな風に構成されてるか学ぶんだから、むしろ社会に出てから使わないような数学やら、化学の授業よりはよっぽど意味があると思うよ?」
当たり前でしょうとつけたして、口に運びかけていたサンドイッチにかじりつく。
「でもさ、渚。そりゃぁ地理とかは良いのよ。でも、なんていうか…そう、基礎社会、あれがわけわからない…。」
「[世界はpirika(ピリカ)によって成り立たされている]ってやつ?でも、さ、それがこの社会の基本なんだから、わかるわからないじゃなくて、わからなきゃいけないんだよ。」
「そーなんだけどさー…」
空いている方の手で髪をくしゃくしゃとかきまわし、少しうなだれるような素振りを見せる。
「簡単なことはそりゃわかるよ?でも高校に入ってすっごい難しくなった気がする…。なんであんなことまで…」
「今日の授業だと…ウェザーラインの確保の方法とか?あれなら簡単だよ、100年前にあった[自然の摂理]に似せて、天気を操る。その自然の摂理っていうのも、古典地理の応用だよ。雨の降りやすいところとか、習ったでしょ?」
「それだけじゃなくて、食料供給とか、そんなのの難しい話がわけわからない…。フィールドごとに展開されたパルスがとか、もう…駄目…」
箸を置いて完全にうなだれる薫。
「なんでpirikaって在るんだろ…」
薫が、ふとそう呟いた。
「薫は理数系得意だからいいじゃない、このままだと大学も選び放題だろうし。私はむしろ理数系駄目だからなぁ…進路選択では完全なる文系組…。社会科くらいしか得意じやないし、選べる大学も限られてるし…」
「でも、就職には文系の方が有利とかきくよ〜?」
だらんと箸をもったまま背もたれにもたれかかり、気だるそうにそう薫は受け答えた。
「そう…なんだ…。それじゃぁ、もし薫が食べていけなくなったら私が食べさせてあげるよ。」
そう笑いながら冗談で言うと、薫は勢いよく元気を取り戻し、親指を立て、
「丼飯でよろしくっ」
と一言だけ言い、食べかけのお弁当の差し掛かった。
2.基礎社会構成
to be continude