私以外の家族が出掛けたので掃除をしつつ、映画を観ました。2本観たのですが、内1本はこんな時だからこそ観れた映画でした。拷問男とOLDを観ました。以下、粗筋を感想です。



【 拷問男 】「愛してる、果てしなく」

シングルファザーのデレクは6歳の誕生日を迎えたばかりの一人娘を誘拐された末に殺害されてしまう。半年後、娘を失った喪失感から立ち直れずにいたデレクであったが、偶然にも犯人を見付け、その人物を監禁し、殺された娘の復讐の為にありとあらゆる拷問で苦痛を与え続けるのであった。


以前から妹壱号が観てほしいと勧めて来ていたのですが、全く食指が動かず今の今まで平穏な日々を過ごしていたのですが、私のせいで1人の罪のない人間がこの人を選ぶ映画を鑑賞してしまう、拷問男を鑑賞させる拷問をする事態に罪悪感に苛まれた私は贖罪の為に映画を観る事を決めたのですが、その禊が今日漸く、行う事が出来ました。マイカサン、この度は私の発言により多大な御迷惑をお掛けし、心よりお詫び申し上げます。約束通り、鑑賞致しましたので、目を通していただければ幸いです。鑑賞が遅くなった事を重ねて謝罪致します。申し訳御座いません。

タイトル通り、無惨にも娘を殺された父親が犯人を拷問する凄惨なグロ描写がある映画なのですが、意外にも話がしっかりした映画で、ただグロいだけではない作品でした。思っていたよりもグロくはなかったですが、まだ6歳の愛する娘を殺された父親の娘が味わった以上の苦痛を犯人に与えようとする拷問の数々はR15以上はあるのではと思いました。思ったよりグロくはなかっただけでグロいです。首の切り付けが苦手な私からすれば拷問の下準備の時点でグロかった。思わず雑誌の裏の広告のハイネックを着た男性の様に服の首元を鼻先まで引っ張って観てましたもんね。勿論、犯人に同情は出来ないし、絶対に許せないと言う父親の気持ちは解るのですが、自分ならあそこまで残忍に冷酷になれるかと思いました。多分なれない。デレクも犯人が分かった時に証拠を手に一度は警察まで行ったものの、結局、犯人について何も言わず、自分で復讐する事を選びました。この映画はフィクションかもしれませんが、作中で出て来た10歳の少年2人が5歳の男の子を殺害した話は実話であり、子供が犠牲になる事件は今でも起こり続けています。例え加害者が法で裁かれたとしても死んだ子供は帰っては来ないし、残された者の心の傷も一生消える事はありません。復讐しても何も変わらないと良く聞きますが、罪に対し法的に下された罰によって本当に気が晴れる人間はどれだけいるのでしょうか。実行はせずとも同じ痛みと苦しみを相手に味わわせたいと言うデレクの気持ちに共感出来る方は多いのではないでしょうか。自分のした事を反省せず、顧みる事なくのうのうと生きているのなら尚の事です。殺された人の苦痛、残された人にも与えた一生消えない傷を相手の体にも負わせる過激な描写ですが、本当の意味での報いはこう言う事だと思います。これ以上、又は同等の報いを今の法律によって受けさせる事はそう多くはないと思います。

グロ描写も然る事ながら他のシーンも丁寧に描かれていました。物語は娘のジョージアが生まれる所から始まります。そこからジョージアのホームビデオによる成長記録が流されていきます。デレクがジョージアを溺愛し、大切に育てていたのが良く解ります。滅茶苦茶、良い子で滅茶苦茶可愛いです。そんなジョージアが遺体となって発見された際、見せこそはしませんでしたが、現場に居た嘔吐する女性警察官が如何にジョージアの遺体がまともな状態になかったかが、嫌という程に理解出来ます。ヒッチャーでもそうですが、こう言う見せないグロの演出は凄いと思います。誘拐されてから必死の捜索中、偶々、警察の無線でジョージアが発見された事とその場所を聞いたデレクが心底嬉しそうにその場所へ向かえば、発見された娘は変わり果てた姿だったのは下げて上げてからのドン底と言う言葉にならない程の辛いシーンでした。ディレクターズカットでしか観れないシーンなのですが、娘を失った後にデレクはグループセラピーに参加し、似た境遇の他の参加者に犯人を捕まえるチャンスがあったとしたら復讐するかと質問し、参加者は皆、拷問して殺すと答えたのが、デレクの中の切っ掛けになりました。更に他の参加者の事件も同じ犯人と中々に重要なシーンだったので観たかったですね。拷問までに至る経緯がしっかりと事細かに作られた御陰でただのグロ映画だけでは終わらせない良い映画に仕上がっていました。幻のジョージアが出る度に泣きそうになった。飽くまで私の考察なのですが、証拠となったノートの一文、駆け付けて言葉を交わす事なく浴びせた平手打ち、デレクの相手が誰であろうと容赦のなかった残虐な拷問、そして、犯人自身が起こした異常な犯行そのものから察するに明言はされなかったですが、家庭に問題があったのではないかと思いました。

そんな痛々しくも切ない今作ですが、ふとした事で笑ってしまったシーンが幾つかあります。用意周到且つ時間をかけて行われる拷問なのですが、『脚にドライバーを刺す、ハンマーを手に叩きつけると言う行為を通りすがりにやる突然の雑さ』『歯を抜いた事により、口に溜まった血を家庭用の掃除機で吸う』『父親のやっている行為が悪い事ではないかと尋ねるが、最後はちゃんと通報すると言われ、じゃあ良いよと言う純真無垢な娘の幻』『体を反転させるほどの母親のビンタ』等々。全然、茶化す内容じゃないのですが気になってしまいました。

原題がDaddy's Little Girlのこの作品は何故だか邦題では拷問男となっており、それで損をしてるとか原題のままで良いと言う意見があり、一理も二理あるのですが、拷問男と言うアクの強いタイトルだからこそ、一線を引けた訳で、話の切なさが感じ取れる原題だとグロに耐性がない人が観たらそのギャップに気分を害する可能性があり、尚且つ、グロホイホイの邦題の映画が実は話も良かったと御得感があり、敢えてのアクと解釈した私はこのタイトルで良かったと思っておりましたが、パッケージ裏にアギャッー!!ゥギャー!!!ォゥォア゛ァォー!!とあったので全く擁護出来ないです。考えた方には反省していただきたいです。

そんなこんなで隠れた良作で心に残る映画でした。但し、人は選ぶ。選びに選ぶ。マイカサン、改めて申し訳御座いません!マイカサンがどれだけグロ耐性があるのか定かではありませんが、だからこそ、観てもらう映画ではありませんでした!でも、父親の行為をDIYって言うマイカサンの感性も中々だとは思いました!私の知っているDIYじゃない。いや、すみません!これからもよろしく御願いします!何卒!



【 OLD 】「そのビーチでは、一生が一日で終わる。」

離婚寸前の夫婦が娘と息子を連れて最後の家族旅行にリゾート地へと訪れる。ホテルのマネージャーから近くにプライベートビーチがあるとの話を聞き、一家はそのビーチで過ごす事を決める。ビーチには一家以外にもホテルの宿泊客が居て、思い思いに過ごしていたが、そこで見知らぬ女性の死体を発見する。電話は繋がらず、ホテルに戻る為、来た道を引き返そうとするも頭痛を起こし、意識を失ってしまい、更にはこのプライベートビーチでは通常よりも急速に年老いる謎の現象によって、それぞれ体に異変が起き始めていた。


2021年に公開されて、観たかったですが観れなかった1本です。シャマラン監督の新作と言う事で気になっていました。当たり外れがありますがシャマランってだけ無条件で気になる。シャマランマジック。今回はビーチで居るだけで急速に老いていく時間の恐怖を描いた作品です。どれくらいの早さかと言うと大体30分で1年の早さです。ビーチでの時間の流れが早い為、映画のテンポも早くなっています。あっちで何か起きたかと思えば、こっちで起きてとてんやわんやする目が離せない展開がビーチに着いてから終盤まで続きます。時間の流れ、老いと言うのは残酷なものと重々承知ですが、人間が生きている限り消して避けられないじわじわと蝕む恐怖が凝縮されて一気に降りかかってくるのは想像するだけでもぞっとします。肉体的な恐怖だけではなく、精神的な恐怖もあり、発狂し兼ねない事態です。しかし、時間の恐怖もそうなのですが、この非現実の裏に隠された真実が怖かったですね。謎解きタイムスリラーとの事ですが、こんなん解る人居るんですか。何故、ビーチでだけ時間の流れが早いのかと考えていた私には辿り着けませんでした。これまでも我々の知らない所であの様な事があって今があるのかもしれませんが、許されんでしょ。巻き込み過ぎでしょ。時間の恐怖と言いましたが、時間が解決するシーンはあの絶望の中だからこそ際立って良いものでしたね。人は必ず老いるし、死んでしまうけれども、それまでの時間、誰と過ごすのか、どう生きるかを考えさせられる映画でした。急激に成長した子供が果たしてその言葉や方法を知っているのか疑問に思う所があったものの、誰かが教える事がなくとも見え方や感じ方と言うものはいつの間にか自然に変化するものなのかなあと思いました。あの状況下ではその色は普通のものとは異なったのかもしれませんが。抗う事の出来ない時間の恐怖と同時に時間の大切さも描いた、非現実でありながら現実味がある不思議な作品でした。今回はガッツリとシャマランが出てましたね。出たがりなんだから。次はヴィシットみたいな作品が見たいです。



(詳録220405)