その日。
空は雲に覆われた、はっきりしない
天気だった。
「何か、怖いよ」
不意に言葉が口から出る。
それは、昨日の事。
打ち明けられた、話。
「いいか、良く聞いてくれ」
「うん」
長い時間と、驚きの連続。
「おじさんが!?そんな事をしたら」
「大丈夫、君との約束だ」
「また、会えるよね?」
すがるように俯せる。
「いつかまた会えるよ、忘れ去られる前に」
「僕は忘れない!忘れたりしないよ」
部屋を出てぽつりぽつりと何かを口にする。
「そうだ、先生にお線香あげようっと!」
駆け出したその時、急に目の前に
入って来た、その姿。
「何だろう?」
その部屋には妄りに入れないはずだった。
急に不安を感じた、その時だった。
ドカーンと言う爆発音がして
ガラスが割れた。
ビービービーっと危険を知らせるサイレンが
辺りに響いた。
「い、いたたたたた」
割れたガラスはバラバラと天井からも
降ってきた。
「わあああああ!!!」
もうダメだと諦めた時に走ってくる人影が
ギリギリの所でそれを交わした。
「こら!部屋に居なきゃダメじゃないか!」
「リーヴィル、ごめんね」
と、次々に爆発音が鳴り響き
天井のあちこちからガラスが破壊された。
「くそ!奴等一体何処に!」
「リーヴィル、怖いよ」
「大丈夫だ!離れるなよ!?」
「うん!」
背中におんぶしてもらい、崩れていく中を
走り出した。
外へ出ると魔術師達が次々に出て来ていた。
「くっそ!奴等、なんてしつこいんだ!」
「リーヴィル様!」
「どうした!?」
数人の魔術師が駆けて来ると。
「魔方陣が、奴等に」
「意地でもジャヴィラを、と言ってました」
「おじさん!おじさんは!?」
その場にいない事に、気付いた。

「リーヴィル様!危ない!」
その声に真上を見上げると、巨大な石の壁が
リーヴィルめがけて崩れてきた。
「わあああああ!!!」
ぎゅっと瞑った目を開けると
僅か数センチの間で止まっていた。
「リーヴィル!?」
「行け!走るんだ!早く!!」
魔術師の1人が腕に少年を抱える。
「待って!リーヴィルが!リーヴィルが!」
「ごめんな、もう無理かも知れない」
静かな夜に、ガラガラガシャーンという
音が響く。
「リーヴィルぅぅぅぅぅ!!」
少年の叫び声が夜空に
いつまでも聞こえていた。