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第1章「消えゆく者達の運命」1


丸1日が過ぎた。
「奥底に眠りし白き御霊よ」
真剣な表情で術式を編み上げていく。
「うんうん、中々筋が良いね」
「ぷはーっ!もうキツいよぉぉぉぉぉ」
何発か打った後でとうとう座り込んだ。
「お疲れ様、良く頑張ったね」
「もー、ファルヴァル先生よりスパルタ!」
ふぅと息を吐き出し、練習場から出てきた。
「今日はここまで!」
「わぁい、やったぁ!!」
タタタっと駆け出し、鞄を持って来ると
「じゃあ、また明日!」
ペコリと頭を下げてニッと笑った。
「うん、またね」
遠ざかる姿を見送ってフッと息を吐く。
「そこにいるのは誰だ?」
明らかに負のオーラを放つ何者かがいた。
「見つかったーえへ」
「誰だと聞いてるんだ!答えろ!」
「隙あり」
明らかに気配の無い所からズブリと
何かが突き刺さる音がした。
「お、お前達は、一体」
「さぁ、次へ行くぞ」
「ほっほほーい!」
「待て、そこを、通る事は、許さん!」
ふらふらになりながら
やっとの思いで立ち上がった。
「往生際の悪い奴め」
「何事ですか?ああーっ!貴様ら!」
魔術師達が駆け付けると辺りを包囲した。
「観念しろ!!」
「一旦引くぞ」
「ほーい!」
「おのれ、逃がすか!」
「フッ、さらばだ!」
辺りには黒い羽が散らばっていた。
「おじさん!」
知らせを受け、慌てて駆け寄った姿を見つけ
男はホッとしたように微笑んだ。
「無事で、良かった、大丈夫、心配ない」
「おじさん!!」
「救護班!早く!」
辺りはバタバタと忙しくなった。
「まだ何人か侵入してるかも知れない」
「気を付けろよ」
厳重な警備の中、突然それは起こった。
「はーい、お兄ぃさぁーん!」
「誰だ!何処だ!」
「フン、容易いな!行くぞ」
バタバタと人が倒れていく中、ついに
中央部に入って来た。
「ジャヴィラ様」
支えてある柱を破るとキーンと
甲高い音を立てて術式が崩れていく。
「わーお!すっごーい!」
「むっ?!」
「何々、どおしたのぉー?」
緊迫の中、正と負の戦いが始まる。

「お前は、誰だ」
シャリーンと透き通る音がして
目の前に立ち塞がる。
「クックック、まさか余興があるとはな」
「楽しみ楽しみぃぃぃぃぃ!」
しかし、瞳の奥の闇はメラメラと
燃えていた。
「邪魔をするなら、切る!」
「面白い、やってもらおうか」
お互いの意気が高々と上がっていく。
金属音が響き渡り
いつまでも止む事はなかった。



ここまで更新した感想3


はい。

何か皆して浮かれてますが良いのですか(笑)

蠢く奴等、そして…!!

ますますヒートアップする展開を

どうか最後まで

宜しくお願いしますね〜

それではっ!



序章3「悪夢の全てを知る時」3


その時、運命が動いた。
「おじさん、誰?」
「ん?君は中々勇気ある子だね」
ストンと地面に降り立ったのを見届けてから
魔術師達が前列に杖を構え並んだ。
「貴様!何者だ!?」
1人が睨みながら問いただす。
「うーん、実はこういう者なんだけどね」
男は襟元のバッジをチラッと見せた。
「あれは!?」
「そんな、まだ存命であったとは!?」
ファルヴァルとリーヴィルが
驚きの声を上げる。
「ははーっ」
構えていた魔術師達も地にひれ伏した。
「おじさん、偉い人なの?」
自分を見上げる小さな瞳がパチパチと動く。
「君はこれから強く優しくなれるだろう」
「僕が?どうして?」
「守るべき者を助けたい、そうだろう?」
小さな身体で必死に立つ姿を見て
男は肩をポンと叩いた。
「君になら出来る、だから」
すっと何かのケースを差し出した。
「宝物をあげよう」
「これが宝物?」
パチクリと中身を見て驚く。
「えーっと誰か魂入の術式が使える人は?」
「ここにいる全員が」
「そっか、じゃあやり易いね」
ケースの中から出てきたのは紛れもない
生身の人間。
真っ赤なリボンを着けた女の子。
「これから、魂入の儀式を行う」
「まさか、この子を媒体に?」
「そう、まだやれるよね?」
女の子を魔方陣のすぐ側に置き
皆でそれを囲って一斉に呪文を唱えた。
すると、魔方陣の中から出てきた光る魂が
うねうねと女の子に移っていった。
「成功、したのか?」
「媒体が意外な所から出てきたし」
「終わったんだ!!」
「これでヤツを封じ込められた!やった!」
皆して喜びの声を上げた。
「こんな事って」
「わしゃ夢でも見てるのか?」
「ファルヴァル先生、リーヴィル!!」
「おお」
駆け出してきた姿を見つけて微笑み返す。
「僕、頑張るよ!いっぱい勉強するよ!」
「その意気じゃ、頑張れよ」
だが、現実はそんなに甘くはなかった。

「まあるく収まったみたいだよーえへ」
「何喜んでんだ、バカ野郎」
「皆、今のうちに良い夢見てればいいさ」
「そうそう!!きゃは!!」
「行くぞ」
高い高い空から、不気味な笑みを浮かべ
飛び立って行った。



序章3「悪夢の全てを知る時」2


皆、何も出来ず
ただ魔方陣を見つめていた。
すると、すたすたと足音を立てて
小さな影が魔方陣に近付いた。
「待て!何をする気だ!?まさか」
慌ててリーヴィルが止めに入る。
「やめてよ、リーヴィル!僕じゃないと!」
「バカ!お前が死んだら誰が」
そっと、立ち上がり
リーヴィルの腕を降ろす。
「大丈夫、僕は死なないよ」
魔方陣へ1歩足を踏み入れる。
途端、足元が真っ黒な光に包まれる。
じわりじわりと中央に向かえば向かう程
身体に激痛が走る。
「うっ、くっ」
やがて中央に到達し、横たわる人影に
話し掛ける。
「悲しいよね?悔しいよね?でも、大丈夫」
ボウッと魔方陣が青黒く光を立てる。
「寂しいよね?痛いよね?全部吐き出して」
青黒い光が取り込もうと身体に巻き付く。
「大丈夫、僕が、守るから」
必死に言葉を投げ掛ける。
「僕は、いつまでも、側に、居るよ」
ゴゴゴッと魔方陣が動き始める。
「ほら、約束、したよね?」
真っ黒い魂がするりと落ちてきてうねうねと
波打つように出て来た。
「ほうら、怖くない怖くなんか無いよ?」
だが、魂が光を失う寸前。
「はぁはぁはぁ、うっ、くっ」
ポタッと一滴、汗が魔方陣を濡らした。
その途端。
黒い光が伸びて
身体に巻き付き宙吊りになる。
「ああ!!」
「いかん、土人形はまだ崩れたままじゃ!」
魔方陣はそのまま身体を取り込もうと
ずぶずぶと沈んでいく。
その時だった。
「破、凜、到、立!!」
聞き慣れない術式が魔方陣に向かって
放たれた。

光はまばゆい金色に変わり
魔方陣は動きを止めて静かになった。
「助かった?のか」
リーヴィルがあまりの眩しさに目を細める。
「間に合って良かった」
聞き慣れない声に
全員の目がその姿に釘付けになった。
この時、運命が変わろうとは
誰も予想しなかった。




序章3「悪夢の全てを知る時」1


黒い羽が舞っていた。
「何者だ!!」
「名乗る必要はない」
バサリと羽を広げると、風が渦を巻いて
辺りを吹き散らした。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
術式が解かれ、あっという間に魔方陣の
文字が消え失せた。
「フッ、厄介な呪術を組んでやがる」
羽を持つ鳥人間のような男が羽ばたくと
何処へとも無く飛び立った。
「ヤツは!?」
「大丈夫じゃ、まだ気付いてないはず」
風が収まると魔術師達があちこちから
起き上がった。
「ああ!!」
魔術師の1人が叫ぶ。
「どうした!?」
「土人形が壊れました」
ざっくりと切り刻まれた跡を見て
魔術師達が頭を垂れた。
「折角ヤツを捕らえたのに」
「これでは、術式を組めない」
「一体、どうすれば」
ざわざわと騒がしくなる。
「皆の者!!」
その一声で辺りはシーンと静まりかえる。
「我が息子よ、いよいよ全てを知る時」
痩せ衰えボロボロになった人物が
抱えられてその場に現れた。
そして、長い時間が過ぎていった。
「我が息子よ、勉学に励めよ」
ガタガタとその身を震わせ、最後の言葉を
口にした。
「達者でな」
「お、お、お父、さん」
やがて握り締めた手がだらりと垂れ下がり
それきり動かなくなった。
崩れていく形に側近達が目を伏せた。
「お父さん!お父さん!いやだ!こんな」
掴めば掴む程、砂となって消えていく。
そして、全てが失われていった。
「お父さん、お母さん」
この時、僅か3歳。
小さく光る物がコロンと音を立てて落ちた。

「頑張る、頑張るよ、きっと、きっと」
何度も涙を拭いながら
自分自身に言い聞かせる。
「待っててね」
号泣する幼い子供を見つめて、辺りは
ただただ、すすり泣く声に包まれた。
「くそっ!何も出来ないなんて!」
「そう自分を責めるな、リーヴィル」
「だけど、兄貴!!」
涙目でリーヴィルが訴えるも
何も手の施しが出来ないと分かっていた。