だから私は二次創作を提供しようと思う。
こんな時だからこそ冷静に、クライシスコアをちょろっと書いてみたよ!
皆さまの暇つぶしになればいいと思うんだ…ちょっとでも気晴らしになればいい。
だから私は二次創作を提供しようとおm
って思ってたけど今って電波とかすげえ貴重じゃないですかしまった…!
長いです!
青い目のタークス(仮)
(時系列はアンジールがいなくなった後)
どうしてもツォンの手が空かない時があった。
タークスはまだまだ人手が足りない上に、自由奔放な後輩が二人も居る。
だから俺に命がくだった。たったひとつだけ、任務というには名ばかりの。
“五番街の教会を見てきてくれ”
ツォンから一言、ただそれだけ。
妙だと思った。ツォンだけが足を運んでいた教会。何があるかも興味はなかった。
上司の命で向かったそこには、こんなご時世に似つかわしくない花が咲いていた。
プレートの僅かな切れ目から差し込む光の下で、空を知らない花が。
目が奪われた。
名も知らない花、手折られそうな花が、ずっと脳味噌の隅に咲いていた。
「これ、なんか暗ーい任務?」
ブリーフィングルームの中から軽い声が聞こえてきた。軽いけれど人好きのしそうな声だと思った。ブリーフィングルームに続く自動ドアをくぐる。見慣れたツォンの後ろ姿と、デスクに向かうラザード統括、その間にソルジャーの制服を来た男がひとり立っていた。
澄んだ青い目が、すぐにこちらへ向けられる。
「遅いぞ。どのフロアのトイレまで行っていたんだ」
「悪い悪い、トイレットペーパーがなくてさ」
あからさまに溜め息を吐いたツォンがクールな顔を歪める。ふるふると小さく頭を振って、俺から視線を外した。
「ネクタイくらいキチンと結べと何度も言ったが」
「首、苦しいの苦手なんだよ」
「だったらするな。そのほうがまだ見栄えがいい」
「それだとレノとかぶるだろ、キャラが」
「チャラチャラしているのが既にかぶっている」
短く笑えばツォンからは溜め息が返ってくる。
パチパチと瞬きをしているソルジャーは状況が把握できていないのか、恐る恐る挙手をして注目を集めた。
「あのー、そちらさんは誰?タークス、だよな?」
「ああ、紹介が遅れた。タークスのネーヴェだ」
「どうも」
「今回の任務に同行する」
「タークスが二人も?」
ソルジャーはちらりとラザード統括を見た。それからすぐに俺を見ると、戸惑い気味に会釈をする。
「俺、ザックス」
「ネーヴェだ。アンジールとは面識がないが、彼の故郷には何度か行っている。地理とツォンの補佐が任務だ。大した役割は担っていない、安心して働いてくれ」
唇を緩めて笑みを作ると、ザックスは頷いてくれた。
けれど青い目はまだ少し戸惑っている。アンジールとは先輩後輩の仲だと聞いていたが、どうやらそれだけじゃないらしい。人懐っこそうだもんな、ザックス。人間が好き、そんな顔をしてる。神羅では見ない顔だった。
「準備ができたら声をかけてくれ」
ツォンの声にかぶって、着信音が響いた。タークスの俺たちは常にバイブにしているし、ラザード統括がブリーフィング中に電源を切っていないことはない。だとすると目の前のザックスしかいないか。
案の定、ザックスはツォンに短く告げると、電話に出た。
一言二言、会話をすると、ザックスはすぐにブリーフィングルームを出て行った。漏れ聞こえた会話からは面で誰か待っているらしい。
「おちつきのないやつだ」
ツォンが俺を見て笑った。
***
「よろしくな」
しばらくして戻ってきたザックスに、ツォンは友好的に笑いかけた。
ツォンの後ろで椅子に座って、くるくる回っていた俺を見てラザード統括が小さく笑う。
「単なる調査だろ?そっちの人も、大したことないって言ってたもんな。楽勝」
「どうかな」
余裕そうに拳を叩いて笑うザックスは、すぐに笑みをしまってツォンを見る。
ツォンは視線を合わせることなく、ブリーフィングルームの自動ドアのほうを見る。
霞んだガラスの向こうには誰もいない。
「この任務は本来、セフィロスが行くはずだった。つまり、それほど重要視されているということだ」
クールなツォンはザックスを振り返って、クールに告げる。
「甘く見ると、失敗するぞ」
ほんの僅か、ザックスは視線をさまよわせた。
「セフィロスは?」
「命令拒否、だそうだ」
「そんなのアリ?甘やかしすぎじゃないの?」
冗談めいて笑うザックスの声を聞いたツォンは、小さく笑った。
そのまま微笑みをたたえてザックスを見る。
「本人に言ってみるか?」
「えあっ、えっ…やめてっ!」
ぱちんと顔の前で手のひらを合わせたソルジャーは、ねだるように小首を傾げて笑った。困ったような顔をしているのが、怒られた子供のようで少し笑う。
「そんなに脅かすなよ、ツォン」
「椅子で遊んでいるやつに言われたくはないな」
ザックスの目がツォンから俺に滑る。目があった青は、少しだけ揺れた。
「出発するぞ」
***
荒野の真ん中にぽつんと生えるミッドガルを出た神羅の軍用ヘリは、荒野を滑るように抜けて行った。
やがて見えてくる緑の向こう、山間の小さな集落にゆっくりと降りる。
空にはまばらな雲が流れていた。それでも、ミッドガルにいる時とは比べものにならない青空が頭の上にずっと広がっている。
青々とした緑の大地、そこへ生えたアーチ状の白い木をくぐった。
集落へ続く街道をトンネルのように覆う木に、青いリンゴがたわわに実っている。農園だ。
「変な木」
最後尾を歩いていたザックスの声がした。
振り返ると彼はアーチ状の木を眺めて立ち止まっている。
「バノーラ・ホワイトの木だ。通称バカリンゴ」
振り返ったツォンが律儀に答える。足を止めた先頭から距離を置いて、俺もバカリンゴを見上げた。つやつやした真っ青な実、色は毒々しいけれど、甘く誘う香りに思わず唾を飲んだ。美味そうだな。
「ってことは、ここはバノーラ村?アンジールの故郷!?」
「そのとおり。ジェネシスとアンジールは、昔からの知り合いというわけだ」
ひと月前に起きたソルジャークラス1st・アンジールの失踪。長く続いたウータイでの戦争以前に姿を眩ましたソルジャークラス1st・ジェネシス、それと同時に起きたソルジャーの大量脱走事件。
神羅はそれら全てが関係しているのではないかと調査を進めている。
ツォンの言うように、彼らは古い知り合い…仲のいい幼なじみだったからだ。
ひらりと気配がして街道の先を見た。ウータイに現れたというジェネシス・コピーが、ひらりひらりとこちらへ双剣の切っ先を向ける。
俺たちがハンドガンに手をかけるよりも早く、背の剣を抜いたザックスが駆けて行った。軽く切り捨てられたジェネシス・コピーは悲鳴すら上げずに倒れ伏す。さすがはソルジャー、戦闘じゃ敵わないな。
「こいつら、ウータイにいた連中!?」
「やはり、この村にいたか。村人の姿を見かけないのも気になる。村は占拠されている可能性もある」
ツォンはくるりと周囲を見回した。確かに誰の気配もない。いやな静けさがある。
「ジェネシスたちは大量の兵器と一緒に姿を消した。一刻も早い回収、または破壊が社長のお望みだ」
「よし、任せろ」
クールなツォンに向かってガッツポーズをして見せたザックスは、ひらりと踵を返すと、街道を駆け上がって行った。
モンスターやジェネシス・コピーに襲撃されながら、けれどものともせずにバカリンゴのトンネルを走って行く姿が、白い木の合間から見える。
「あーあ、もう見えなくなったぜ。犬みたいなやつだな」
「子犬のザックスというそうだ」
「あっは、違いねぇ」
***
役場前の大きな広場で追いついたザックスは、大きなクモ型兵器を倒した後だった。いかめしいボディのそれはまさしく神羅のセンスだ。
広場の入り口に倒れる二つの影を見下ろして立つ彼の背に、ツォンが淡々と近づいて行く。
「…ジェネシス・コピー」
「その言葉をどこで?」
「セフィロスから聞いた」
ザックスの横を通り過ぎたツォンは、広場の端、ちょうど役場と塀の角で、黒煙を上げ、動かなくなっているクモ型兵器を見つめて足を止める。
ザックスの横で立ち止まると、一瞬、青い目が俺を見た。
「この技術も我が社の科学部門から盗まれたものだ」
「はぁ!?」
「ジェネシスの能力と特徴をコピーすることができる技術らしい」
振り返るツォンはいつもと同じ、クールな顔だった。
「ソルジャーと、モンスターだけにな」
ザックスは小さく口を開いて、けれど声にはしなかった。
クールな眼差しを向けるツォンを見つめたまま、動かなくなる。
「ソルジャーとモンスターは同じかよ───」
本当に小さく、彼の声が聞こえた。
俺に目配せをして、ツォンは来た時と同じようにザックスの横を通り過ぎる。
足元のジェネシス・コピーに落ちていた青い目が、ツォンを追うように俺に向けられた。戸惑うような、色の目だ。
「なに?」
「あ、いや」
「ブリーフィングルームで会った時にも同じ目、してたよな」
逸らされる前に、ずいと顔を近づけて青い目を覗き込む。
驚いて反射的に仰け反ったザックスは、それでも俺の目を見て動きを止めた。
ザックスの青い目と似すぎている、同じ青の目。
「この目だろ。気になってるな」
「だってその色…」
「魔胱を浴びた影響だ」
「魔胱…!?だってあんた、タークスだろ!?」
「いろいろあってソルジャーになれなかった落ちこぼれなんだよ」
小さく笑って顔を離す。俺を見る目は複雑に太陽の光を反射していた。
「ツォンが待ってる。早く行かないとうるさいぞ」
なれなかった落ちこぼれ、自分で言って少し笑った。
なれなかった落ちこぼれなんかじゃない、なれない欠陥品なのに。
ソルジャーだけじゃない、宝条の研究に身を投じたあの時から、俺は人間としても欠陥品になってしまった。
自ら望んだ結果に後悔はしていない。だって神羅兵よりもソルジャーよりも、神羅のサラリーマンよりも給料のいいタークスにもなれたしな。
だから、
「やさしいやつだな」
そんな目で見るなよ。かなしくなる。
***
「ここがジェネシスの実家、両親はこのあたりの地主だ」
集落のひときわ大きな家を見上げるザックスを見たツォンが口を開く。
けれどザックスは答えずに、家を見上げていた。家、じゃないな、その庭の、大きなバノーラの木を見つめている。立派な木だ。
「旧知なんてものではない…ふたりは幼なじみで、親友だった」
家に向かって歩いていくツォンを追いかけて、ザックスが足を動かす。その歩調は少しだけ苛立っているように見えた。
「脱走したジェネシスが、親友のアンジールを仲間にした。そういうこと?」
「セフィロスはそう考えているようだ。───おや?」
庭に視線を流したツォンが何かに気がついた。彼の視線を追って、ザックスも顔を向ける。俺もそちらに目を遣った。
黄色い花の咲く、木の根元。僅かに盛り上がった色の違う土の上に、大きな石が乗せられている。
「墓石だな。まだ新しい」
僅かに声を切ったツォンは、墓石を見つめているザックスに目を向けた。
「ザックス、アンジールの家を確認してくれ。俺は墓を調べる」
「げっ…タークスって、そんなこともするのか!」
「誰かがやらなくてはならない」
「大変だな…」
歩き出したツォンを追っていた足を止めて、ザックスは苦い顔で肩を落とした。ツォンの声に笑いが混じる。
「気にするな。おかげでおまえより給料はいい」
「まじかよ!」
弾かれたように顔を上げたザックスは、ツォンの背中から俺に視線を向ける。
「まじだ」
笑って答えてやったら、子犬はおもしろい顔をした。
墓石の前に片膝をついてしゃがみ込んだツォンの横に立つ。地主の家だというだけあって、ジェネシスの家は高台に建っているようだった。その先にある小さな集落が丸ごと見渡せる。
集落の規模にしては大きな噴水が水を吹き上げていた。
「墓は俺が調べる。アンジールの家を確認してくれ」
頷いて駆けて行くザックスが、風車小屋の前を抜けて行った。手近な家のドアを開けている姿から視線を外し、ツォンに目を遣る。
「“墓は俺が調べる”?」
「おまえもだ」
「いやだなあ」
ツォンは小さく溜め息をついた。気づかないふりをして、墓石の向こうを見る。黄色と、気づかなかったけれど赤い花が咲いていた。
プレートの下の彼女を思い出して、目を細める。
「まだ行ってるのか?」
「どこへだ」
「スラム」
ツォンの手が動きを止めた。一瞬、間を開けて、クールな顔が俺を見る。
「なぜだ?」
「俺も彼女をこっそり見守りたいって話」
「こっそり見守っているだろ」
「ツォンはね」
「おまえもだ」
目を向けたツォンは作業に戻っていた。淡々とした動作で墓石をどけている。
「休憩、任務、問わずにふらりと出かける時は、たいていあの教会だ」
「なんだ、バレてたんだ」
「俺がおまえに頼んだのは、たった一度きりだと思ったが」
「ツォンだってこっそり見守ってるんだから、あいこだろ」
「俺は任務だ」
「なんの?」
ツォンは口を閉じてだんまりを決め込んだ。掘り起こされる土の音を聞きなが、集落を眺める。噴水に近い家からザックスとモンスターが飛び出してきたところだ。
「あの子、もしかしてツォンの彼女?かわいいもんな」
「惚れるなよ」
「彼女だから?」
「任務対象だからだ」
クールでくそまじめなツォン。墓石の下からは男女の遺体とタークスの制服を着た二人の遺体が出てきた。
決まりだ。
「ジェネシスとアンジール、ここにいると思うか」
「可能性は高い」
「ザックス、アンジールと親しそうだな」
「関係はよかったみたいだが」
「ふうん」
危ういなと、思った。人懐っこいザックスなら、もしかしたら二人を連れて帰ることもできるかもしれないとも思ったけれど。
「…はじまったな」
ツォンは答えなかった。
なんだかしんみりしてしまった。青い目のタークスさんはこんなかんじのひと。エアリスに恋しちゃってるひと。