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ようこそ、ここは舞台裏


CASE 0.


目を開けると、そこは暗闇だった。
穴の底だろうか。それとも、今が夜中であるだけなのだろうか。そんな判断もつかない。

「なんだ…ここは…」

ただの呟きのはずなのに、いやに声が響く。反響する自分の声に酔いそうになるのをこらえ、しっかりと目を開く。

―状況を理解したい。

まずは、それだった。
ここはどこなのか。いつのことなのか。一体何が起きているのか。

何故、第三者が自分を見ているような映像が、頭の片隅にぼんやりと浮かぶのか。



ふう、と息を吐き、深呼吸。
「よし」と意気込み、とりあえず今向いている方向に向かって歩いてみることにする。
手探りもせず、ただただ歩く。

歩く、歩く、歩く、
歩く、歩く、歩く、
歩く、歩く、歩く、


一向に何かにぶつかる気配はないが、疲れる気配もない。

このまま歩くしかないのか…

そう思った矢先のことだった。



どんっ!



激しい振動を体で感じた。慌てて身構えるが、原因も分からなければ対処の仕方も想像がつかない。ただファイティングポーズをとるだけだ。
しっかりと踏ん張り、何かに対して構えるが、振動は一度だけだった。

一体なんだったん―


どんっ!


油断した…!
今度は足元が揺れる。まるで地震のようだ。バランスを崩し、尻餅をつく。揺れは収まる気配がない。揺れに抗うように体を支えるが、段々そんな抵抗も虚しく思えてくる。









このままどうなるのだろうか。

立つことを試みず、ただ呆然とする。









ぴたっ。


急に揺れが止まった。少しバランスを崩すが、呆気にとられる。今のは一体なんだったのか、と。



何もない空間を静寂が包む。

尻餅をついた体勢のまま、ふと上方を見上げると、微かな、本当に微かな光が見えた。



―俺は、助かるのか。



…助かる?



強烈な違和感に襲われた。
そして、最も重要なことに気がついた。











俺は一体、誰なんだ。






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話題:創作小説
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