運命

中学入学式。わたしは髪もロングになり、見た目も女の子らしくなった。クラス発表で、わたしは愕然とした。同じクラスには凌がいた。
凌はわたしが告白した夜、好きだった子に告白し付き合ったという噂を聞いた。なんだわたしは二番手だったのかと気まずい思いをしながらクラスですれ違う日々が続いた。落ち込んでいた。そんな中、クラスの男子の大橋くんから階段でいきなりルーズリーフの手紙を渡された。初めて見る男の子の字だった。<いきなり手紙を渡してごめん。種田さんて、好きな人いるの?>そんな内容だった。ちゃんと話したこともなかったし、急だったから心底わたしは驚いた。男の子みたいだったわたしは誰かから好意をもたれたことがなかったし、戸惑いを覚えた。

それから大橋くんとは手紙をやりとりするようになった。大橋くんはわたしと凌の関係を知らず、凌とも仲良くなっていた。大橋くんはよく凌にわたしのことを相談していてたらしかった。わたしは凌とのことは忘れたかった。凌とはギクシャクしながらもふたたびクラスメイトとして言葉を交わすようになっていた。

中学1年、5月の宿泊研修のキャンプファイアーの夜、大橋くんに呼び出された。理由はなんとなくわかっていた。「好きです。付き合ってください」わたしが凌に言った言葉だった。わたしは頷いた。初めての彼氏だったし、優しい人だし、なによりわたしを好きになってくれたんだし、これでいいんだって思ってた。わたしたちを凌が遠くから見守っていた。
そのとき、凌は、この人にわたしを託したんだな、わたしのことは何とも思ってなかったんだな。そう思って少し哀しかった。