作り話。


「ここに、宝箱があります」

「・・・はあ。ありますねえ。宝入ってるんですかこれ。」

「信じるも信じないもあなた次第です」

「どこかで聞いたような台詞っ「開けないでくださいね?」・・・へ?」

 


  この箱の中身は見てはいけません。  

 

 

「鍵はこの部屋の中に隠されています。でも、」

 

  この箱の中身を見てはいけません。  

 


「わかりましたか?」

「まあ、はい。見ちゃいけないってことは」

「ならいいんです。それじゃわたしは一旦部屋から出ますね。さよなら」

「え!?あ・・・はい、さようなら」

 

 

 

鍵はすぐ見つかった。

あの人は帰ってこない。

箱の中身は気になる。

そっと、そーっと、

箱を、

開けた。

 

 

 

 

 


「宝箱でしたか?あなたにとっては」

「何とも言えないですね。ただ、」

「ただ?」

「私は隠すことができない。

だから貴方の約束を破ったこと、話してしまいました」

「ええ。わたしはとても傷つきました。

偽ることのほうが正しいこともあるのです」

「黙っていれば隠し通せたのに」

「あなたはできなかったわけじゃない。

しなかった」

「知っています」

「ほう。ならばなぜ、『できない』という言葉を使ったのか」

「単なる逃げです」

「だと思ったよ」

 

 

 

 


  この箱の中身は見てはいけません。  

 

黙っていれば気付かれない。

黙っていれば、

 

 

今のわたしはいない。