生存確認
 モズ氷(dcst)
 2021/2/17 03:27

「何で俺なの?」
「君がやりたいと言ったんでしょう」

君はこちらです、と言いながら手渡されたそれを見た時から、何か違う気がしてた。案の定だった。長い長い帯の端を掴んで力任せに引っ張った氷月は、竹とんぼの様に激しく回転して空を飛ぶ俺を一瞥する事もなく、ほむらちゃんに手招きされるまま雑煮を囲む輪に混ざって行った。
俺はと言えば空中からそれを確認して、そして華麗に地に降り立った。他人の力によっての強制的なスピンをキめながらもこの百点満点の着地、まさに天才の成せる技。餅を啜りながらそれを眺めたスイカちゃんがぱちぱちと拍手をしてくれる。いや、どーもどーも。

「そういう事じゃないの解ってるくせに」

片手に雑煮の入った椀、片手に箸を持っている氷月は、腰を抱き寄せる俺の手を払う術がない。袴ってエロいよね。腰の所の隙間、どう考えたって手を差し込む為の隙間だろ。その用途の通りにそこから手を侵入させて、下っ腹をそれらしく撫でてやると、餅を噛む顎の動きが止まった。
睨まれたって痛くも痒くもない。氷月のお遊びにちゃんと付き合ってやったんだから、次は氷月が俺のお遊びにちゃんと付き合ってくれる番でしょ。

「…君の分もありますよ」
「食べないともたないもんね?」

椀の縁に触れて、透明な汁を吸い込む唇が、苦々しげに少し歪む。こんなに美味しいのに、何でそんな顔をするのかなぁ。対して、俺の唇は端が上がるばかりだった。

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