仕事が忙しければ忙しいほど
このまま遊びに行きたくなる
すると
実家暮らしの重さをかんじる
仕事が忙しければ忙しいほど
もういやー
ここから出してー
だしてー
家を出て北九州に行っているあいだ
あたしには貯金がひとつもなかった
今もないけど
貯金がなかったからかなぁ
母は
その3年間を無駄だと言った
無駄な3年間を過ごしたんやから
無駄な3年間を過ごしたんやから
無駄な3年間を過ごしたんやから
無駄だと
へぇ
そうなんや
あたしの3年間は
無駄やったんや
そうなんやぁ
確かにたくさん遊んでたが
本当の自分を出せる友だちを得た時間だった
母も姉も知らない
本当のあたしを
受け入れてくれる
大切な人びととの出会いがあった
大切な時間やったと思うんやけどなぁ
無駄やと思ってたんやなぁ
3年間自由に過ごしたんやから
姉もしんどいやろうから
そう思って
実家に帰ってきたけど
もー…
めんどくさい
出たい出して出してここから出たい出してよお願いだから出してくれよ出せよ殺してよ出せないならもうここから出られないのなら首を絞めて殺してよ胸を抉って殺してよ殺せよ早く
納骨の日の朝
おばぁが死んでから初めておばぁの夢を見た
横たわって、目を開けるはずのないおばぁが、目を開けて、こちらを優しい目で見た
ゆっくりと動いてベッド脇のあたしの頭から頬に手をやり、穏やかに見つめた
「ゆい」
「ありがとう」
「元気でな」
「またな」
確かにおばぁの声
確かにおばぁの手のひら
確かにおばぁの目
確かにおばぁの口
確かに
あたしの知る
穏やかなおばぁだった
もう一度だけ触ってもらいたかったんだ
おばぁもあたしに触りたかったんでしょ?
よかった
会えて
あたしが書いた手紙
読んでくれたんだね
「また来世で会おうね」
来世はあたしがおばあちゃんでもいいけど…
…やっぱりあたしのおばあちゃんはおばぁがいいな