家に帰る。

そんな人で溢れる電車。

鳴り響く走行音、それは磨り減る重低音。

車内に充満するのは、人が1日にかいた汗の匂い。

乾燥した口の中には、ざらつく舌がそわそわ動く。



そうして幾らか時間が過ぎ、電車は駅に到着する。

駅は安い蛍光灯に照らされ、その光に吸い寄せられる虫が空を飛ぶ。

そこには人などいるはずもなく、開けられたドアは閉まるだけ。

時間は過ぎる。

終点はとっくに過ぎたはずなのに。