あの人の頭のなかは、どうなっているのだろう。
いつもそんなことを考えていたら、その人のことしか考えられなくなって、その人のことしか見ることができなくなって。
気付いたら、ドンウさんを自分のものにしたくなっていた。
彼が笑って、俺も笑って、という日常に感謝しながら、内心は焦っていた。
ドンウさんが他のメンバーと笑いあう度、他のメンバーのことを触る度。
俺、どうしたんだろう?
隣で寝るドンウさんを見ながら、朝日を浴びるのも慣れた。いつも、太陽に見つからないように布団に潜った。
悪いことを、してるみたいだった。
だけど、今日は、隣で寝る太陽が夜明け前に起きた。
開かれた瞳に俺が移る。
「ホヤ…?寝れない?」
まだ眠くてとろん、としている口調だったけど、それでも俺を心配するドンウさん。
「いや、そ、の」
いきなり起きたことへの驚きとドンウさんを見ていたことがばれてしまったことの動揺でうまく言葉が出てこなかった。
「さいきん、ほや、くまが、」
そういいながら、横になったままのドンウさんは自分の腕にまとわりつく布団を少し煩わしそうにして、俺の目の下に触れた。同じような行為をソンギュヒョンにしている光景を思い出してしまって、胸が、ちりっと、焦げた。
その熱さに自分でも驚いて、ドンウさんの手を払いのけてしまった。
「…ご、めん」
ドンウさんが驚いた顔をして、でもすぐに情けないような、申し訳ないような顔で謝る。
なんでこんな顔をさせているんだろう。
なんでドンウさんが頭から離れないんだろう。
なんでドンウさんが笑顔じゃなきゃいやなのに、俺に向けられた笑顔じゃないとつらいのだろう。
なんで、なんで、なんで
「ちがうんだ、」
「…ホヤ、?」
がんがんと、頭が痛い。
わからない。全然わからない。ドンウさんは大切なメンバーで、大切な兄さんで、失くしたくなくて、ずっと一緒にこの仕事をやっていきたくて、でも、それ以上に、
頭に手を添えながら、上半身を起こして、自分の手を見つめる。
この手が、したいこと。
そうだ。ただただ、単純に。
ドンウさんに触りたかったんだ。
太陽には触れられないよって。触れる前に弱い人間はとけちゃうんだって。
ねえ、ドンウさん。
目をぎゅっとつむっていたら、その太陽のぬくもりが、体に感覚として存在して。
ドンウさんが俺を抱きしめてると知る。
なんだ、溶けるなんて嘘じゃん、なんて、混乱した頭が思って。
「ホヤ、どうしたの。泣かないで」
目をつむっているだけだよ、
泣いてなんかいないよ、
涙なんて流していないよ。
なぜ、
なぜいつも心を見るの?ドンウさん。
たまらなくなって、抱きしめ返す。
少し窮屈そうになるくらい、ギュ、て、強く。
「ドンウさん、わかんないんだ、おれ」
「うん」
「ドンウさんのこと触りたいのに」
「うん」
「触れないんだ、この気持ち、俺、知らないんだよ。わからないんだ。」
「ね、ホヤ」
「…うん?」
ずっと聞いてくれていたドンウさんが、俺の頭をなでながら、優しいような、少し焦ったような声を俺に放つ。
ドンウさんはわかるのかな、この気持ち、知ってる?
顔を上げると、、兄さんの顔でもなくて、メンバーの顔でもないドンウさんがそこにいた。
「ホヤ、キスしようか」
「…え?」
「いや?だ?」
首をかしげて、唇に指を近づけた。
本当に、この人の頭の中を見てみたい。
さっきまで、太陽だと思っていた人が、今は月光に照らされていて、とてもきれいで、
滑らかな肌に、手を添える。
とても不思議で、
触れてみる。
たまらなく、たまらなく
唇を、自分の唇で、塞いだ。
この人を欲しいと思った。
もうそこからは止まらなくて、どっちかの布団に倒れこんで、口内の粘膜を刺激しあった。
舌と、歯と、唇と、すべてを共有するようなそんなキスだった。
唇がようやく離れて、ドンウさんは息が荒くて(もちろん俺も)息を絶え絶えに、ドンウさんが言った。
「ホヤ、あ、のね、俺」
まっすぐ俺を見るドンウさんは、いつもの太陽みたいなドンウさんに戻っていて。
「こういうこと、ホヤと、もっとしたいよ。」
とても純粋に、素直に、ドンウさんは言う。
「欲しく、ない?ホヤになら、あげる。
俺の全部、あげる。」
欲しいよ。
そう言うのも煩わしくて、
今この時間が自分の発する声で奪われていくのが悔しくて、力いっぱいに抱きしめて、口が当たるところ全部にキスをした。髪にも、目にも、鼻にも耳にも口にも、鎖骨にも、首筋にも、肩にも。体全体で、キスを繰り返した。
ドンウさん、ドンウさん。
ずっと欲しかったんだ。
この時間が、この空間が、この感触が、
ドンウさんが。
「ドンウさんはさ」
「うん?」
「太陽みたいだから。ダメだと思ったんだ、触っちゃ。ドンウさん言ってたじゃん、触れる前に溶けるって」
「ははは」
ほんとにおもしろい、て顔して笑った後、少し考えて、パアッと効果音が付きそうになるくらいの笑顔でこっちを向いた。
「溶けて一緒になっちゃえばいいよ!そしたらずっと一緒〜!」
まるで一番の解決策を見つけたみたいに、俺の手を握って、安心した顔で目を閉じたドンウさんを見て、笑みがこぼれた。
「ねぇ、ホヤ〜」
眠りにすでに誘われているのだろう。あまりはっきりしない声でゆっくりと話し始める。まるで子守歌みたいで、俺もうとうとし始めた。
「きっと、太陽は、さ、一人であんな、広いとこにいて、みんなを照らし続けて、寂しいよ、一緒に溶けてくれる人いたら、きっと、だいじょうぶ、だね」
終わりまで聞いたか聞かなかったかのところで、眠りに落ちた。
太陽が、一人、だって?それなら、ほんと、俺だけが、一緒にいられる、かな。
朝日に照らされながら、二人で眠った。
もう逃げなくていいんだ、と思った。
こっちには、太陽がついてるから、さ。