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理想郷

今は、いつだろうか。

もはや僕にはそれすら分からない…。

世界は今、人間中心の政治から機会中心の政治へと変わりつつある。長い間続いてきた人間の時代が、今…変わろうとしているのだ…。
最初にその兆しが見えたのは五十年前。テレビに映る政治家が、ふくよかな頬を揺らしながら懸命に訴えているのを観てからだ。

理想郷[2]

――「今、この世界はいろいろな問題を抱えています。温暖化、森林破壊、空気汚染、水質汚染、土壌汚染、フロンガスによるオゾン層の破壊、核問題、領土問題、戦争、テロ、クーデター…。
まだまだ数え切れない程です。これらの問題は各国だけの問題ではなく、全世界共通の問題でもある。そうでしょう?考えてもみてください。人間が、人類が、他国の事を敬い、手をさしのべ救い助け合い、お互いに見守りあえば戦争やテロが起こりますか?互いにてを取り合って大きな波が来るのならば皆で被り、そしてそのなみに乗ろうではありませんか。団結しようではありませんか。結束し、自然を、動物を、世界を、守ろうではありませんか。
…そして、我々にできる事はまずひとつです。いいですか、世界は人類の進化によってここまで汚されてしまいました。人間は科学を武器により良い国づくりに集中し、周りが見えなくなってしまいました。ですが、今度は、これからは、その科学の力を逆手にとり、科学の力でこの世界を復活させようではありませんか!人間の武器である科学技術で世界を美しくつくりかえるのです!」

理想郷[3]

政治家は汗を拭い、テレビを見る人々にむかって、静かに言い放った。
「人間の人間たる理由は、…『心』です。人間の心が闘争心を生み、戦争やテロが起こる…。ですが、心を作り替えることはできません。だから…科学の力で!この心を、食べることを必要としない、朽ちないカラダへ、無敵のカラダに移すのです!そうすれば、人類は滅びゆく世界を救うことができる。そして我々は共生し続ける事ができるのです!
人類再興計画…。これがこれからの人類の歩む道です。」―――


消えたテレビ画面を見つめ、僕の隣で彼女が呟いた。
倫理とは、…後付けでしか、ないのよ。

倫理。
…あの政治家が言っていた事は、本当に正しい事なのだろうか?
やっぱり、僕には分からない。でも、いくら物事が分からなくても、時間は進し世界は廻る。
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