司令室では―――

「へぇ〜、あんたが小学生の時に悠真に弟のように可愛がられたのか〜。ふ〜ん」
梓、少しニヤついている。


「琴浦さん、なんなんですか…。急に馴れ馴れしくなって」

晴斗は梓が急に馴れ馴れしくなり、たじたじに。


「あたしは悠真…いや鼎の用心棒で来たのよ。ゼルフェノアの鼎ってどんな感じなわけ?」
「琴浦さん、話したんじゃないの?鼎さんと。冷淡な話し方するけど…本当はそうじゃないっていうか…。不器用っていうか…」

「話し方が変わった感じなのね。…あの事件のせいなのかねぇ…。事件の影響、計り知れないな〜。
見た目が完全に別人だもの。あんな姿になってるなんてさ…」

梓は「ふーん」というリアクション。


悠真はあの事件のせいで火傷で変わり果てた姿となり、話し方までもが変わってしまったんだ。
梓は平静を装ってるが、内心用心棒をうまくやれるか不安がまだ残っている。



そんな司令室に鼎と彩音が戻ってきた。宇崎が心配そうに声を掛ける。

「鼎…大丈夫なの?続行出来るか?」
「…あれから寝ていたから大丈夫だ。彩音が側にいてくれたおかげで休めた」

相変わらず鼎は冷淡な話し方だ。


彩音は晴斗と梓にさらっと言う。
「鼎は復帰してからまだ2日しか経ってないから、ちょっと感覚が戻ってないかもしれないの」


そこに御堂が飛び込んできた。


「某商店街付近で見たことねぇ、怪人なんだかロボットなんだかわけわからないもんが出た!お前ら出動すんぞっ!」

「あのー、どちら様ですか?」
梓はマイペース。御堂は答えた。

「俺は御堂和希。ゼルフェノア隊長だ。お前が例の鼎の用心棒?」


「そうだよ。悠真…いや鼎の幼なじみの琴浦梓よ。用心棒と言っても、鼎が司令室にいる時はあたしも怪人倒しに出動するんだけどね」
「毎回用心棒するわけじゃねぇのかよ…」


御堂は「えぇ…」という顔をした。
梓からしたらこのラフな格好をした人が隊長!?というリアクション。あまりにも軽装すぎやしませんか…。


御堂は急かした。
「おらっ!行くぞ!さっさと支度しろっ!敵出現してんだよ!!」
「御堂さんと一緒の任務、久しぶりだね!」

晴斗は嬉しそう。梓は薙刀を装備。
「あたしも行くよ!」


司令室には宇崎と鼎が残り、彩音は一応司令室にいることに。


「彩音…司令室にいるの?」

宇崎、遠慮がちに聞いている。
「一応ね。たぶん鼎は大丈夫なんだろうけど…。鼎はさ…琴浦さんのこともあるし…」

そんな鼎はメインモニターを凝視→怪人を拡大していた。


「なんなんだ…これは」
ライブ映像には機械のような人型の怪人の姿が。ロボット?アンドロイド?なんなんだ…この奇妙な怪人は。



某商店街付近。御堂・晴斗・梓の3人は現場に到着。

そこには機械のような金属のような、人型の生命体が1体いた。今まであんな怪人見たことなんてない。


「1体だけぇ!?」

晴斗はオーバーリアクション。御堂は遠目に見ながら銃を構える。愛用のカスタム銃と対怪人用銃、両方装備していた。
梓も薙刀を構えた。

「見たところ…何攻撃してくるかわからないな」


機械生命体はいきなり市民達にビームを発射。当てられた市民達は眠るようにして倒れた。

なんだあのビーム!?



某所。イーディスとDr.グレアのアジトを兼ねたオフィスビル。
このオフィスビルは謎に包まれた会社・「畝黒(うねぐろ)コーポレーション」のもので、畝黒家がイーディス達のバックにいる。


某所の畝黒家当主・畝黒當麻(うねぐろとうま)はイーディスからの報告を受けていた。

「當麻様、マキナを実戦投入しましたわよ。これであの女を引きずり出そうかと」
「市民を眠らせたのはなんだ?」

「私達が興味があるのはゼルフェノアと紀柳院鼎のみ。市民には興味ないの。だからマキナのビームで眠らせたのよ。市民には危害は一切加えないわよ」
「イーディス…お前の計画のために場所を提供したんだ。成果を出して貰わないと困るぞ。畝黒コーポレーションを隠れ蓑にすればいい」


當麻は若き当主で常に和装。陰のある男性という感じ。
イーディス達2人と畝黒家は手を組んでいた。畝黒家もゼルフェノアを潰そうと画策している模様。


「當麻様、ご覧下さい。ゼルフェノア隊員が来ましたよ?マキナは簡単には倒せません…」
イーディスは含み笑いをした。



畝黒コーポレーション・地下研究所。イーディスは當麻に報告をリモートでし、その後研究所のモニターでゼルフェノアvsマキナとの戦闘の様子を見ていた。


「グレア〜。あなたの開発したマキナちゃんの実力…見せて貰うわよ♪」
「イーディス、やけに上機嫌だね」

「この戦いを待っていたんだから当たり前でしょう?鼎のことはとりあえず置いといて、ゼルフェノアの実力がどれくらいなのか…」



某商店街。御堂と晴斗は銃で謎の怪人に攻撃するも、怪人の身体は金属のようになっている。

御堂は対怪人用銃に持ち替えた。
「これで行くしかねぇか!」


梓はタイミングを見計らっていた。薙刀ゆえに飛び道具とは違う。

あの怪人…機械生命体?今まで出現した怪人とは明らかに傾向が違う。市民を眠らせたのは危害を加えないためかも。


…と、なると…。


梓はいきなりダッシュ。そしてジャンプし、飛び蹴りを喰らわす。
この予想外の彼女の攻撃に御堂達2人は発砲するのをやめる。

「琴浦!無茶だろっ!」
御堂は叫ぶ。
「やってみなくちゃわからないでしょ!!この怪人…今まで見た怪人とは明らかに違うんだよ。何か裏がある。それにしてもこいつに攻撃すんの、難しいぞ!」


今まで見た怪人とは明らかに違う怪人…。



司令室の鼎は謎の機械生命体が引っ掛かっていた。

あの日…拉致された時、イーディスの他にいかにもマッドサイエンティストな出で立ちの男性がいた気がしたからだ。


イーディスは鼎が数年前にやっていた復讐代行の同業者。イーディスは通称で本名は不明。
あのマッドサイエンティストも名前も通称なので、こちらも本名は不明。



「…室長……あの怪人…市民に危害を一切加えていない。狙いは私達…ゼルフェノアなんだろうか…」
「鼎?どうしたの…なんか深刻そうだけど」

「心当たりがあるんだよ…」


心当たり?敵を知っているのか?鼎は…。



某商店街付近ではなかなか戦闘が進展しない。

「こいつの体…金属製か?ロボットともアンドロイドとも違う。見た目は怪人だが…って、うわあっ!!」
御堂はいきなり攻撃を受けてしまう。

マキナの攻撃力は高く、弱点もわからない。晴斗や梓も次々立ち向かうが、あしらわれてしまう。



イーディスはモニタリングしながら笑っていた。


「あはは!マキナちゃんの弱点探しに苦戦しているようね〜。どんどんやっちゃいなさい!」

イーディスはイケイケモード。



マキナはさらに猛攻を仕掛けてくる。場所が商店街ということから、安易に隊員の人数を増やすわけには行かない状況。


「室長、このまま行けば不利のままだ。弱点がわかればいいのだが…」
そう呟く鼎に解析班から通信が司令室に入る。

「司令と司令補佐、今私達が急ピッチで謎の怪人の弱点を探しているから。
今のところの分析ではこの怪人は人為的に作られたものだとわかったのよ。人間が作った怪人なのよ!」


人為的に作られた怪人!?


朝倉は続けた。

「こいつは機械生命体とも言える怪人だわ。ロボットともアンドロイドとも違う、未知の怪人よ。
人間が作った怪人なら何かしら弱点はあるわ」
「和希達は苦戦している…!解析班にプロフェッショナルがいるはずだろ!そいつは何やってんだ!!」

鼎は思わず声を荒げていた。


「神(じん)と映像解析の波路(はじ)が必死にやっているから!司令補佐、落ち着いて。落ち着いて…下さいよ…。気持ちはわかりますが」


鼎はようやく落ち着きを取り戻しつつあった。朝倉の言葉で我に返ったから。

「司令補佐は補佐がやれることをして。お飾りじゃあないでしょう!?
お飾りで補佐になったわけじゃないですよね!?」


お飾りなわけ…ないだろうが。確かに補佐就任直後は「お飾り」だと市民から揶揄されてきた。組織の一部隊員からも。


「朝倉…私はお飾り補佐なんかじゃない」
「お願いしますよ、紀柳院司令補佐。では、随時報告しますから!弱点わかったらすぐに報告しますね!」


通信が切れた。鼎は複雑そうにメインモニターを見つめてる。仮面姿なので顔は見えないのだが、どこか寂しそう。


宇崎が声を掛けた。

「鼎、気にすんな。朝倉はお前のことを思って言ったんだろうよ」
「………そうかな」



解析班の持ち場。朝倉達は急ピッチで作業中。

「は〜じ〜、何かしら見つかった?」
「まだだよ〜」

「朝倉、興味深いものが見つかったよ」
「神さん、なーに?」
朝倉は椅子を神の元へと移動してPCモニターを見る。


「この怪人…核があるな」
「核?」

神は画像を拡大させる。
「心臓部だよ。この核(コア)を壊せば機械生命体は倒せるはず。俺の憶測では」
「でもさぁ、機械生命体の装甲…硬いんだよね。攻略法…ないかしら」



御堂達は敵の装甲を破ろうとするも、苦戦。場所が商店街ゆえにロケット砲も使えない。


「また爆発!?」
梓は爆発音にビビった模様。
「琴浦、爆発ごときでビビってんなよ!」
「あんた達みたいな怪人倒すプロと一緒にしないでよ!!あたしはあくまでも鼎の用心棒だっつーのっ!!」


なんだかんだまんざらではなさそうな御堂と梓。
晴斗は晴斗で様々な攻撃を仕掛けているも、簡単に弾かれてしまう。


どうすりゃいいんだよ…!