私がまだ幼い頃、材木会社でトラックの運転をしていた父は、時々私をトラックの助手席に乗せてくれた
近くの山道を登り、切り出された長い丸太を父は一人で軽々とトラックに積み込んだ
何百、何千と担いだ父の丈夫な肩には相応の毛が生えていたものだ
そして積荷したトラックは開通間もない九州自動車道を走り抜ける
「おい、ゆん。起きろ」
「、、うん、、どうしたの?」
父は助手席で寝ていた私に
「いいからメーター見てみろ。今、時速百キロで走ってるんだぞ」
「うん。わぁ、すごいねぇ」
何より働き者で様々な困難に取り組む、真面目を絵に描いたような父は家族の柱で、私の尊敬の対象だった
私は父を悪く言う人を聞いた事がない
寡黙だったが皆から愛されていた父の歴史が
まるで一冊の本を閉じるように静かに終わりを迎えた
享年91才